劇場公開日 1997年9月13日

「科学者が描いた本気の第五種接近遭遇」コンタクト かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5科学者が描いた本気の第五種接近遭遇

2024年7月20日
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鑑賞方法:映画館

カール・セーガン原作。
ロバート・ゼメキス監督。
第五種接近遭遇とは、地球外知的生命体との対話をさす分類。

【ストーリー】
プエルトリコのアレシボ天文台。
エリー・アロウェイ博士は、SETIプログラム——地球外知的生命体を地上で探知する施設——に携わる研究者。
だがその研究は結果につながる見込みなしと、大統領科学顧問のドラムリンより予算をカットされてしまう。
どうにか見つけた実業家のハッテンをパトロンに、ニューメキシコ州の超大型干渉電波望遠鏡群で研究を継続し、ついに作為のある信号を抽出する。
電波源の方角はこと座α通称「ベガ」。
信号は素数の数列で、全宇宙共通の数字だった。
エリーを邪魔者あつかいするドラムリンはこれをおもしろく思わず、ついに施設の乗っ取りを画策する。
研究チームは信号からアドルフ・ヒトラーの1936年オリンピック開会式の宣言映像を抽出し、それが最初の人類からの広域発信であると先手を打って広報する。
重大な案件とみた政府によって、チームは厳重な警備下におかれ、研究者たちは不自由な生活をしいられてしまう。
通信の解析が終了すると、それは6万ページをこえる、一人用の星間移動マシンの設計図だった。
多国間で資金を出しあい、フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センターにそのマシンは作られたが、搭乗候補者の選定段階でテロリストたちの襲撃に遭い、ドラムリンと他数名が殺害されてしまう。
だが絶望するエリーの元に、ソ連製宇宙ステーション・ミールでガン治療をするハッテンから連絡が入る。
「政府は秘密裏に2号機を作っていた。場所は日本だ」
選考者から唯一生き残っているアメリカ人のエリーに、マシンの稼働実験が託された。

原作者のカール・セーガン博士をご存知の方は多いかと思います。
オカルト否定の立場から、科学の番人として長年メディアで活動されていた、「SETIプロジェクト」をふくめた数多くの外宇宙探査計画を手がけてきた「惑星協会」の設立者です。
NASAにおける地球外生命の探査活動にも参加していて、そっちで知ってる方も多いかも。
科学解説の出版物が多く、邦訳も多数あり、本職は天文学者で惑星科学者。
本国アメリカのみならず、天文学好きなら誰もが知る科学者でした。
太陽系探査機パイオニアの銘板や恒星間探査機ボイジャーのゴールデンレコードを制作したことでも知られています。

この作品はSFの中でも理論部分や小物に十分な説得力をもたせた、ハードSFというジャンルに分類されます。
かんたんに説明すると、世界観にファンタジー要素が少ないSFです。
科学者が小説を書くことの多いアメリカがつよいジャンルで、古くはジュール・ヴェルヌ『月世界旅行』、アーサー・C・クラーク『2001年宇宙の旅』やアイザック・アシモフ『アイ,ロボット』などなど映像化された作品は山のようにあります。
日本なら『日本沈没』の小松左京作品群、大友克洋『AKIRA』士郎政宗『アップルシード』、中国でも劉慈欣『三体』など、お金をかけて作れば面白くならないわけがない、そういうジャンルです。

この『コンタクト』は、セーガン唯一の小説で、のちの妻アン・ドルーヤンといっしょに書いた映画シナリオが元になっているそうです。
ワームホールの部分は『インターステラー』の科学監修でノーベル物理学賞にも輝いた、友人のキップ・ソーンに解説してもらったとか。
映画化を非常によろこびつつも、残念ながら公開直前にガンで亡くなってしまわれました。
スタッフロールのラストの「カールに捧げる」の文字が、心に刺さります。
『ブレードランナー』のフィリップ・K・ディックもそうだったなあ。
二人とも、最大の成功を目の当たりにはできずに天に召されてしまいましたが、一映画ファンとして、彼らには感謝しかありません。

物語は、宇宙を語りつつも地球とはどんな星なのか、そして人とはどんな存在なのかという、まことカール・セーガンらしい視点から作られてます。
終盤、カルト宗教や社会に飛び火して、科学者の主人公が危機におちいる展開も、実活動での議論や批判からの経験が生かされたのかもしれません。
「私の全存在が、彼らがいることを知っているのです」
とエリーに言わせた言葉こそ、科学に対するセーガンの想いなのでしょう。

エリーは誰とコンタクトしたのか。
この出会いによって知ることとなったのは、人類以外の存在なのか、それとも照らし合わせた自分自身なのか。
この命題は、科学者カール・セーガンが人生をかけて行ってきた、ぼくらへの問いかけそのものなのです。

かせさん
ジョニーデブさんのコメント
2024年8月19日

素晴らしいレビューです。この映画に関していろいろなことがわかり、この映画をよりいっそう好きになりました。ありがとうございます。

ジョニーデブ
グレシャムの法則さんのコメント
2024年7月25日

マシュー・マコノヒーは、インターステラーにも出ていましたが、現代科学の最先端がこの先に、もしかしたら行き着くかもしれないファンタジー的な宇宙の深淵というテーマによく合ってますね。
この映画と原作、私も大好きです。

グレシャムの法則
コバヤシマルさんのコメント
2024年7月22日

共感にコメントありがとうございます。
カールセーガンの初で最後の物語よく映像化出来ましたね。感動します。本も読みましたが知的比喩が多く科学者だなと感心しました。それにしても昔でも色褪せない存在感のある映像でしたね。

コバヤシマル
ゆ~きちさんのコメント
2024年7月21日

共感ありがとうございました。

かなり知的な展開でしたが、最後は感動系の力技、見事な作品でしたねー♪

ゆ~きち