劇場公開日 2021年4月11日

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「小市民たちの、悩み、不和、狂気」デカローグ 第5話 ある殺人に関する物語 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0小市民たちの、悩み、不和、狂気

2021年5月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

DVDの85分版で鑑賞。
60分版では知らないが、弁護士が「持論の死刑廃止論を展開する」のは裁判ではなく、冒頭の弁護士資格を取る時の面接である。
“法廷もの”を期待すると肩すかしを食うはず。

犯人の“事情”は最後に明かされるが、タクシー運転手は「意地の悪い」ヒールであるものの、まさに「理由」のない殺人である。
ラストの犯人と弁護士との接見から、絞首刑にいたるシーンはリアルだ。

自分は「デカローグ」は、第5,6,9,10話をDVDで観ただけだが、「ワルシャワの巨大アパートに暮らす」小市民たちの、悩み、不和、狂気などを、誇張することなく描く。
日常から少し離れたところで顕在化する、人間の無力さ、醜さ、複雑さ。
必ずしも悲劇とは限らないが、ハッピーな展開はなさそうだ。

特に、この第5話は醜い話だ。
なかなか死なないタクシー運転手と苦闘する犯人。
唾をコーヒーカップに吐き出したり、絞首刑後に排泄物が落ちるシーンなどは、汚さを映したいためだけに思える。

自分が観た「デカローグ」全般に言えるのは、観たからといって、どの話も「だから何?」という、何もない“空っぽな感じ”がしてしまうこと。
娯楽性があれば、もちろん“空っぽ”でもOKなのだが・・・。
“苦い食べ物を食べた”ような印象だけで、何に向かっても“昇華”することのない物語の数々である。

「十戒」をテーマにしており、宣伝の仕方もあって、一見すると“芸術系作品”とか“深遠な社会派ドラマ”と勘違いしてしまうが、エグいだけの映画と考えた方が良いと思う。

Imperator