淑女と風船
劇場公開日:1950年2月21日
解説
「銀座の踊子」に次ぐ宝映プロの第二作、東宝企画部の菅英久(企画)同じく撮影所企画部の坂谷良一(脚本)衣笠貞之助門下で稻垣浩、大曽根辰夫、楠田清の弟弟子に当たる日高繁明(演出)服部良一の直系の門下生、原六朗(音楽)の新人チームに楠田清が応援をするスタッフ。出演者では東宝ニュー・フェイス第一期生で「女優(1947)」に出演した和志竹ひさ子が衣笠の推薦によって松井優子の名でデビューし、「銀座の踊子」の山本眞理江と同じ東京新聞ノミネーションの合格者瀧川淳子が抜擢されたほか瀧花久子(大映)、柴田早苗、高杉妙子らが出る。木戸新太郎、内海突破などで歌謡、舞踊場面には近江俊郎、奈良光江、貝谷八百子バレエ団、雪城美沙子などが特出する。
1950年製作/78分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1950年2月21日
ストーリー
昼は数寄屋橋の上で風船を売り、夜はキャバレー・ファニーの掃除婦として働く千賀には故郷に隆子という一人娘がいた。千賀は娘の幸福のためにキャバレーを経営しているのだと苦しい嘘をついていた。ある夜、千賀の許に来た「アスツク」とう隆子の電報に母は狼狽した。ファニーのボーイ金ちゃんとダンサー暁美、ナナエ、マミー、街頭写真の宗兵衛たちの協力で千賀の嘘を実現させてやろうと彼女を一日だけのマダムにした。「良い夢を御覧なさい」の言葉に二人は暁美のアパートに送られたが隆子は母の生活には不相応な華美な室の雰囲気に小首を傾けずにいられなかった。夢の様な一夜の後、目を覚まして母の姿が見えず不安を感じた隆子は何も知らぬアパートの管理人の言葉に総ての夢を破られ、千賀の虚栄の作りごとに裏切られた怒りを感じた。「母娘の愛情が見栄や外聞に代わるなんて情けない」という隆子も暁美に慰められて却って自分の我侭を恥じるのだった。「一所懸命働いて、きっとお母さんを迎えに来ます」と別れの言葉を残して発った隆子に千賀は大きな風船を渡して感慨無量だった。一日だけの夢ではあったが貧しい母娘の生涯の最大の幸福であった。