浮世風呂
劇場公開日:1958年8月24日
解説
丹前風呂を舞台にした風俗ドラマで、「女狐風呂」の小国英雄の脚本を、久方振りに木村恵吾が監督した。撮影は「欲」の竹野治夫。「駅前旅館」の伴淳三郎をはじめ、水戸光子・伊藤弘子・松本錦四郎・伊藤雄之助・福田公子らが出演している。
1958年製作/78分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1958年8月24日
ストーリー
天保十三年、老中・水野越前守は堕落した世上風俗の一大刷新を行った。江戸下町に、湯女を抱え妓楼同様の丹前風呂をかまえる柳湯にも刷新の波は押寄せてきた。主人の与兵衛は家付女房のおりくに健全な風呂に戻すように言うが欲張りのおりくは禁止を前に稼げるだけ稼ごうとする。ところが、目明しの勘助から、目付役人が変装して風呂屋の内情を探り取潰しの有無を決定すると聞いておりくは愕然、早速番頭忠助に見張りを命じた。風呂には、まず怪しい二人連れ--文無し田舎侍・加藤伝八郎と槙源之進である。二人は役人に間違えられたのを幸いいつづけをきめこんだ。そのほかに、また怪しい奴、忠助の注進で慌てて供応したが、それは湯女に売り飛ばされた許婚おしんを尋ねてきた百姓巳之助であった。おしんと会えた喜びも束の間、正体がばれて忠助に叩き出された。そんな一日、馴染みの色事師・神谷栄三郎が一年ぶりで上方から帰ってきた。与兵衛とおりくの娘おふじはこの栄三郎を慕っていたが、栄三郎は、まだ子供だ、と相手にしない。ある夜、おしんと巳之助が駆け落ちして出た。その騒ぎの最中、湯女のおみよが何者かに殺されるという事件が起った。取調べに当った同心・田辺吉十郎は、駆落ちの途次捕えた、おしんと巳之助を犯人と断定した。が、この時、栄三郎は、日頃おみよから馬鹿にされていた知的障害者の下女おまさが殺したのだ、と反対した。意地になって自説をまげぬ吉十郎に、栄三郎は「自分こそは大目付、神谷栄三郎改め、主水正」と正体を明かした。数日後、栄三郎の計いで取潰しを免れた柳湯では、健全経営へと改築を始めた。湯女たちは前借を棒引きしてもらい故郷へ帰ることになった。そして栄三郎は長崎奉行所へ栄転することになり、赴任する彼の傍には、おふじが寄りそっていた。