運河
劇場公開日:1958年7月29日
解説
サンデー毎日連載中の丹羽文雄原作の映画化で、一デザイナーを中心に、愛欲という流れに生きる人々を描こうというもの。脚色は「血の岸壁」の松浦健郎、監督は「春泥尼」の阿部豊、撮影は「陽のあたる坂道(1958)」の伊佐山三郎。主演は「素晴しき男性」の月丘夢路・金子信雄、「踏みはずした春」の浅丘ルリ子。
1958年製作/100分/日本
原題または英題:The Flow
配給:日活
劇場公開日:1958年7月29日
ストーリー
伊丹紀子は、一流デザイナーで、画家の均という夫と、均の先妻の子である眉子という娘があった。ある日、均は前の妻・久子の訪問を受けた。金を借りに来たのだった。久子と入れ違いに秀栄尼がやって来た。均の妹で、妊娠していた。紀子は、知り合いの産婦人科で処置をとらせ、彼女をはげました。眉子は、アルバイト先の社長、米津から、手当を貰うと友人たちと海へ出掛けた。米津は均の友人で、昔久子を張り合ったいわば恋仇である。彼は眉子の身辺に近寄り出し、何事かを企んでいた。一方、均はバー「セ・ラ・ヴィ」のマダム涼子と親しくなっていた。均は、完全すぎる紀子に圧倒されている自分を感じていた。が、涼子には東堂というパトロンがあった。眉子は、米津に誘われ久子の飲み屋や、涼子のバーを歩き廻っていた。米津は、眉子の夢を一つ一つ壊していった。悄然と家に帰った眉子は、紀子のいつにない詰問にあった。眉子の頬に平手打ちがとんだ。眉子は紀子のそんな姿を見て、不思議な感動に襲われた。間もなく、祖父信泰の死の知らせに、均・紀子・眉子の三人はかけつけた。親族会議が開かれ、祖母忠子の「均さんは跡継ぎに」という言葉にうなずく均を見て、紀子は動揺した。淋しく帰京、久子、涼子に解決をつけた紀子は結婚記念日には必ず行く温泉地に旅立った。虚ろな表情で野天風呂に浸る紀子の傍に、音もなく滑りこんで来たのは均だった。二人の眼には、和解の涙があった。