伊那の勘太郎
劇場公開日:1958年5月20日
解説
八住利雄と三村伸太郎の原作を、大和久守正・松浦健郎が脚色、「葵秘帖」の小沢茂弘、「ひばり捕物帖 かんざし小判」の松井鴻が撮影した股旅もの。主演は「大江戸七人衆」の東千代之介、千原しのぶ。その他、大川恵子、尾上鯉之助、喜多川千鶴、岩井半四郎など。
1958年製作/86分/日本
配給:東映
劇場公開日:1958年5月20日
ストーリー
伊那一帯に暴威をふるう重兵衛一家は、祭を種に町民を苦しめた。蔦屋の板前の勘太郎には庄吉という幼友達があり、庄吉には許婚者おしんがいた。しかし、おしんは勘太郎にほのかな想いを寄せていた。ある日、勘太郎はおしんから、庄吉が二人の仲を邪推して賭博にふけっていることを聞いた。勘太郎は単身重兵衛の賭場に乗込んだ。こともあろうに、庄吉は賭けに敗けて、おしんの小作地まで賭けた。見兼ねた勘太郎は、庄吉の代りに自分の体を張って、重兵衛に勝負を挑んだ。緊張の一瞬。サイコロの目は勘太郎の勝と出た。卑怯な重兵衛はいきなり勘太郎に斬りつけた。多勢に無勢、勘太郎は簀巻にされて、岩をかむ激流の天竜川に投げ込まれてしまった。その時、川下では江戸は浅草一帯の親分今戸の富五郎と娘おせいが舟に乗っていた。そして二人は、勘太郎の簀巻をみつけた。--時は流れて、富五郎父娘に助けられた勘太郎は、その器量を買われて、今は一家の兄貴分。しかし想いを故郷伊那で、庄吉と暮しているおしんの上に駈せるのだった。勝気なおせいは、口にこそ出さないが、勘太郎が好きだった。ある日、用心棒の八幡の情婦おぎんから、庄吉が賭博に身を持ちくずし、田畑はもちろん、おしんまでも重兵衛に狙われている、ということを聞いた。置手紙を残して、勘太郎は伊那に駈けつけた。そして、危機一発でおしんの難儀を救った。重兵衛は庄吉をそそのかし、勘太郎をおびき寄せようとした。庄吉は真人間になれと、諌める勘太郎の言葉に耳も借さない。嫉妬に狂う庄吉は勘太郎を夜道に連れ出した。重兵衛一家に囲こまれた勘太郎、その間におしんは重兵衛の所へ。その時、ようやく改心した庄吉は、すべてを勘太郎に詫びるのだった。群がる敵をなき倒す勘太郎の背後に、銃口の狙いが合った時、助人の八幡が白刃をさげて立っていた。思いがけない助勢に力を得て、勘太郎は見事に重兵衛を倒した。次の朝、庄吉とおしんに名残りを惜しみつつ、勘太郎の三度笠が天竜しぶきの中に消えていった。