「関根勤が「私はずっと妻に片想いです」と言っていた」無法松の一生(1958) ROKUxさんの映画レビュー(感想・評価)
関根勤が「私はずっと妻に片想いです」と言っていた
クリックして本文を読む
恋愛の究極は片想いだと聞いたことがある。映画でも、『容疑者Xの献身』や『さびしんぼう』など、片想いを扱った名作品もある。
この『無法松の一生』も、粗野だが純粋で無垢な男の片想いを描いている。終盤近く、夏の夜彼は吉岡邸を訪れ、未亡人に告白をしようするが、果たせない。だがそのとき、未亡人は松五郎の気持ちに初めて気づくのだ。この場面の三船俊郎と高峰秀子の演技は秀逸だと思う。
明治から大正にかけての風俗が描かれている。今はそれらはほとんど失われてしまったのではないかと思うので、貴重な映像資産だ。街並みなど、『男はつらいよ』の寅さんがひょっこり出てきそうな雰囲気(あるいはカメラワークも似ているかも)。
「男は強くあらねばならぬ」という時代の物語であり、映画が撮られた昭和30年代もまだそうした価値観が広く残っていた。現代から見ると違和感がなくもない。
場面転換にいちいちエフェクトが用いられているのにはちょっと辟易。また、人力車の車輪が回る画面による時間経過の表現はちょっとしつこい感じがした。
松五郎が死ぬ時の回想にもエフェクトが過剰だ。そもそも、「末期の走馬灯」は必要だったのか。もっと別の手法はなかったか。
脇を固める役者陣がすごい。
笠智衆、多々良純、宮口精二、左卜全、中村伸郎、飯田蝶子、上田吉二郎など、往年の名優が勢ぞろい。
特に地場の顔役を演じた笠智衆は、見慣れた好々爺ではないので新鮮だった。
コメントする