「オルゴールで流れる「埴生の宿」のメロディーが悲しいです」娘の修学旅行 たーちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
オルゴールで流れる「埴生の宿」のメロディーが悲しいです
今から70年前くらい前のもので、当時の銀座の雰囲気もわかる歴史的価値もありそうな作品です。
まだテレビもそんなに台数もない時代だったので、広告といえば「サンドイッチマン」や「チンドン屋」に宣伝を依頼していたのでしょうか。
今回の寅吉(潮万太郎)もサンドイッチマンとして活躍しておりました。妻が亡くなり娘の小夜子(市川和子)は九州の弟夫婦に預けていて、その娘が修学旅行で上京するといいます。寅吉は見栄を張って社長であると嘘をついていたので、上京する娘に会わせる顔が無いと思い悩みます。それを聞いた相棒の竹三(小原利之)は仲間たちと相談して寅吉を一日社長として、小夜子に会わせるように画策していきます。
そこで起こるドタバタが見ものですが、この寅吉の嘘に仲間の皆が嫌な顔せずに協力していくのが、寅吉の今までの付き合いの良さや人間性が分かって寅吉の善良さが表現されていました。
すり替えられた本物の社長も本来なら仕事を放棄していた従業員に対して、烈火のごとく𠮟りつけるのだろうが、最初は怒っていたものの、自分も寅吉の嘘に付き合ってくれたりします。とても回りの人間関係に恵まれているのが分かります。
一日目は社長に成りすましが成功したのですが、小夜子は吉川先生(穂高のり子)や同級生と今日歩いた銀座をもう一度来所します。そこでサンドイッチマンとしての父の姿を見てしまいます。
先生に泣きついてしまう小夜子でした。
「お父さんの嘘つき」
「あなたより嘘をついたお父さんの方がどれだけつらいか。お父さんは本当の嘘つきじゃない。世の中の誰よりも思いやりのある方。お父さんの夢を壊しちゃいけないわ」
次の日寅吉の家に行きたいという小夜子のために、社長まで自分の家を寅吉の家として迎えようとしてくれています。
寅吉は小夜子を宿舎まで迎えにまいります。
そこで小夜子から社長が嘘だということがバレて泣かれてしまいます。
とぼとぼと帰る寅吉でした。
その後お銀(加治夏子)の店で寅吉がやけ酒を飲んでいると、小夜子が訪ねてきます。
「お父さんの本当の気持ちが分からずにごめんなさい」
寅吉とお銀の仲を気にする小夜子でした。
小夜子は寅吉のサンドイッチマンという職業をどう感じたのでしょうか。最初別のサンドイッチマンを見た時に「嫌な商売ね」と言ったセリフがありました。
少しでも寅吉のサンドイッチマン姿をカッコ良いと思った場面を作った方が良かったのではと思いました。
ラストで九州行きの列車を見送る寅吉のチャップリンの扮装がもの悲しいです。