浅草の灯

劇場公開日:

解説

浜本浩の小説を西村勝巳が脚色し、「十代の反抗」のコンビ、田中重夫が監督、板橋重夫が撮影を担当した。主なる出演者は「恋と金」の根上淳、「十代の反抗」の品川隆二、「虹いくたび」の川上康子、船越英二、「薔薇の絋道館」の大浜千鶴子、矢島ひろ子、「宇宙人東京に現わる」の山形勲など。なお本映画は昭和十二年、松竹大船で故島津保次郎監督で映画化されたことがある。

1956年製作/92分/日本
劇場公開日:1956年3月11日

ストーリー

これは瓢箪他のほとりに十二階がそびえ立ち、浅草オペラ華やかなりし頃の物語である。通称ボカ長こと、無名の画家神田長次郎は、日本座のコーラスガール小杉麗子の熱烈なファンだった。その麗子に御執心の鉄成金半田郷平は、酒場トスキナのマスターを通じて座長佐々木紅光に話を持ちかけるが、芸術家肌の紅光から手きびしくはねつけられた意趣ばらしに、地回りの仙吉を使って舞台の妨害をさせる一方、紅光の妻でプリマドンナの摩利枝を篭絡して麗子を手に入れようと図った。腕っ節が強く気っぷもいいテナー山上七郎や座員たちは、麗子をボカ長の下宿にかくまって貰うことに一決したが、七郎に首ったけの射的屋のお龍が嫉妬心からそれを仙吉に密告したため、七郎は仙吉一味にかこまれ、あわや大ゲンカと見えたところへ座員の藤田が駆けつけ、楽屋で寝ていた飛鳥井が危篤だと告げた。飛鳥井は当り役「フラ・ディアボロ」の舞台写真を前に、七郎たちの「デイアボロ」の合唱を聴きながら息を引き取った。しめやかな通夜も明け、香取と朝もやが立ちこめる六区に出た七郎は、初めて自分が麗子を恋していることに気がついてボカ長の下宿に向うが、麗子は彼に冷たかった。同じ部屋に暮らすうち、麗子はボカ長の底知れぬ善良さに心をほだされていたのである。無謀にもトスキナに現れたボカ長は仙吉らにつかまったが、お龍の知らせでそれを救ったのは七郎だった。七郎は十二階の灯を見上げながら、お龍に「浅草ともこれでお別れだ。俺は大阪へ行って、もっと充実したオペラをやるんだ」と、淋しそうにいうのだった。

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