善太と三平
劇場公開日:1955年
解説
坪田譲治の原作を人形劇「セロ弾きのゴーシュ」の製作者厚木たかが脚色し舞台演出家宮津博が監督した。撮影は「恐怖のカービン銃」の井上莞、音楽は「まぼろし小僧の冒険 第一篇・第二篇」の伊藤宣二の担当である。出演者は岩垂幸彦と竹内照夫の二少年のほか、「サラリーマン 続・目白三平」の宇佐美諄、「狼」の坪内美子など。
1955年製作/日本
配給:教育映画
劇場公開日:1955年
ストーリー
善太と三平の父親青山一郎は町工場の経営者だったが、元来が技術畑で経営面にはうとい彼は、経理面を一切取り締まっていてくれた支配人の急死のあと全く途方にくれた。デフレの風による不況に加えて、支配人が金策に尽きて高利貸しから借りた金の返金を迫られていたからだ。金はたしかに返金されている筈だが、肝心の受領証が紛失していて、証拠となるべきものもなかった。一郎はそのためにすべての責を負って立たねばならず、警察へ連れて行かれる身となった。財産も差押えられて、家中の道具には赤紙がはりつけられた。ある日、隣町の伯父さんが来てお母さんと話していたが、伯父さんは帰る時に三平を連れて行くことになった。弟と引きはなされて、その夜善太は眠れなかった。三平もそっと伯父の家を抜け出して家へ帰って来た。お母さんと三人、かたく抱き合った兄弟は、ただうれしくて笑った。執達吏の手で家財の運び出される日、お母さんは三平の貯金箱からのぞいている紙片を引きずり出してみた。お母さんの顔がパッと明るくなった。それはお父さんが探しぬいていた問題の受領証だったのである。やがてお父さんの帰る日が来た。善太と三平は「お父さんかんげい」と書いた旗を、柿の木に結びつけた。そして、柿の木の梢で「バンザイ」と叫ぶ二人のそばへ、着物を脱ぎすてたお父さんも登って来た。しきりに三平は笛を吹く。梢の三人を見上げるお母さんもなんと明かるい笑顔だったろう。