緋牡丹記
劇場公開日:1955年5月10日
解説
婦人生活に連載され、現在民間放送にて連続ドラマとして放送されている有田治の原作を「路傍の石(1955)」の池田忠雄が田岡敬一と共同で脚色、「潜水艦ろ号 未だ浮上せず」の野村浩将が監督する。撮影は「俺も男さ」の西垣六郎、音楽は「花のゆくえ」の古賀政男の担当。出演者は「ママ横をむいてて」の佐野周二、「隠密若衆」の花柳小菊、「俺も男さ」の筑紫あけみ、「ほらふき丹次」の藤田進、「勢ぞろい 喧嘩若衆」の角梨枝子、「爆笑青春列車」の和田孝、「悲恋まむろ川」の花井蘭子のほか、岡譲司、国方伝、清水将夫などである。
1955年製作/99分/日本
劇場公開日:1955年5月10日
ストーリー
終戦も間近かな南方現地で、食料もなく喘いでいる兵隊の悲惨な姿を見るにしのびず、上官と兵の食事を平等にする様にと申し入れた小柳欣一上等兵は、山崎権三准尉の鉄拳を逃がれようとしたはずみに、誤って山崎の顔に傷を負わせてしまった。而もこれがもとで官位を剥奪された山崎は、命のある限り小柳に復讐することを誓ったのだった。戦争が終り小柳は大阪の成富鉄工所の工員となったが、社長の成富清之助に認められ工場長となり、行く行くは娘の清子と結婚させようとも考えられていた。だが小柳は近くに下宿している西村雪江に心を惹かれていた。雪江の恋人上村隆は両親に結婚を反対されると、既に子供を宿した雪江を残して去った。ある日小柳は山崎に遭遇し拳銃を持って迫られ、漸く虎口を脱したが、社長に許しを乞う手紙を残して大阪を去った。だが雪江との心は結ばれ、娘鈴子をもひきとって結婚した。十年後、西村幸一と改名した小柳は、富士化成の社長になっていたが、或る夜キャバレーで、今は父を失い弟俊彦を医大で勉強させるために働いている清子と再会した。西村は俊彦の学費を出してやると共に、清子を自分の会社に迎えることにした。数日後、西村の自動車がアルバイトの医学生真吉にカスリ傷を負わせたので、西村は自宅迄送りとどけたが真吉の父こそ山崎であることを知って驚いた。だが西村は俊彦同様真吉にも匿名で学資を送ることにした。その頃鈴子と俊彦の心は急速に接近して行き、遂に結婚することになった。折しも息子真吉への好意を知って西村のところへお礼に来た山崎は、不在を装う西村だが、ポートレイトからそれを小柳と見分けた。そして鈴子と俊彦の結婚式。そこに姿を見せた山崎も今は西村の真剣な言葉にピストルを落し頭をさげるのだった。