「凄く美人では無いが可愛さと愛嬌が魅力的で、前向きに生きているという音羽信子の魅力が満載。」銀座の女 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
凄く美人では無いが可愛さと愛嬌が魅力的で、前向きに生きているという音羽信子の魅力が満載。
吉村公三郎 監督による1955年製作(109分)の日本映画。配給:日活
吉村公三郎監督映画は初めての視聴。銀座の芸者達の愛情と哀しみが描かれていて、とても良かった。
まずは、新藤兼人と高橋二三による脚本が、とても良かったのかな。
養子縁組(将来面倒を見てもらう)を期待して東工大生(長谷部健)に金銭的支援をしているいくよ(轟夕起子)だが、学生が文学賞をゲットして関係性を清算されてしまう。加えて、パトロンの議員さん外遊帰国に空港に行くが家族達のパパ!と手を振る娘の存在を前に声さえかけられず、息子の不良化を理由に関係性の解消を言われてしまう。芸者家経営者として金銭的には恵まれていても、あくまで日陰の存在という芸者の哀しさが実に上手く表現されていた。
芸者家に放火が起き、犯人は誰かとのサスペンス要素が入って来て、そこに、福島から乳牛の代金を得るために売られて来た島田文子、彼女が拾って大事にしていた三毛猫が絡んでくる展開もとても面白かった。
そして、音羽信子の演技というか存在感は、強く印象に残った。実はお兄さんが管轄税務署のお偉方でその為に売れっ子になっていたが、兄が八王子に栄転したために御座敷の声がサッパリと掛からなくなってしまい、それを散々に悩む。悩んだ末に有名になるのが一番とやってもいない放火犯を自供するとのエピソードは、凄く美人では無いが可愛さと愛嬌が魅力的な彼女にピッタリとハマっていた。27年間の不倫相手(1978年2人は結婚)という新藤兼人が脚本だけあって、彼女の魅力が満載であった。生きていくことに前向きなキャラクター設定も気に入った。
監督吉村公三郎、脚本新藤兼人、 高橋二三、製作山田典吾、撮影宮島義勇、美術
丸茂孝、音楽伊福部昭、録音福島信雅、照明森年男。
出演
轟夕起子いくよ、乙羽信子琴枝、藤間紫照葉、南寿美子ミサ子、島田文子(さと子)、
田中筆子きよ、日高澄子操、北原三枝ブンちゃん、長谷部健矢ノ口英作、清水将夫高梨三郎、宍戸錠高梨一彦、相馬幸子高梨夫人、金子信雄長畑医師、殿山泰司署長、安部徹長谷川警部、清水元梅津警部補、下絛正巳花田、飯田蝶子お篠姿さん。