あゝ洞爺丸
劇場公開日:1954年11月8日
解説
洞爺丸の遭難事件を映画化したもので、「竜虎八天狗 第一篇・第二篇」の結束信二が脚本を書き、「三日月童子 三部作」の小沢茂弘が初めての現代劇として監督する。撮影は「神風特攻隊」の小西昌三、音楽は「学生五人男」(三部作)の小杉太一郎の担当。主なる出演者は「継母」の宇佐美諄と船山汎、「悪の愉しさ」の伊藤久哉と中野かほる、「学生五人男シリーズ・第一部 幽霊軍隊」の天路圭子、「神風特攻隊」の日野明子など。
1954年製作/49分/日本
劇場公開日:1954年11月8日
ストーリー
青函連絡船洞爺丸の通信士武田は、埠頭で恋人篤子を待っていた。彼女は婚礼衣裳を求めに青森へ行くのだ。桟橋の職員控室では運転士達が台風を気にしている。船長の官舎では省平が気象通報を気にしながら家を出たが、妻よし子は何か一沫の不安を感ずるのだった。出港準備なった洞爺丸は、二時四十分台風十五号の通過を待って出港延期を拡声器で船内に知らせた。然し津軽の海は少しも荒れる模様はない。船客の間では出港を促す声が高くなった。船長を中心に、横田、大岡、事務長が天気図を囲んで慎重に協議している。午後五時には風も静まり、六時三十九分に洞爺丸は港を出て行った。報告された船客は千二百五十七名。だが十五分もたたぬ頃物凄い突風に衝突した。風速五十米。たちまち船は荒波に奔弄され危険防止のため繰り出したいかりも海底にとどかない。車輛甲板は連結が切れ貨車は横転した。その衝撃で大波がどっと船内になだれこんだ。乗客は事の重大さに気づいたが、すでに遅い。修道僧の讃美歌に合せて十字を切る女学生。悲壮な眼ざしの後藤船長は全速排水作業を命じたが、ボイラーが故障し電燈も消えた。マストは砕け人は吹きとび、武田が暗黒の海上に投げだされた時、すでに篤子の姿は怒涛の中に消え、七重浜から三百米の所で一千余名の尊い人命を乗せたまま、出港後五時間にして転覆した。