にっぽん製
劇場公開日:1953年12月8日
解説
朝日新聞連載の三島由紀夫の原作を、「若き日のあやまち」の菊島隆三が脚色した。「浅草物語」の島耕二、長井信一が監督、撮影にあたった。音楽は「霧の第三桟橋」の大森盛太郎。「浅草物語」の山本富士子「紅椿」の木村三津子、「魅せられたる魂」の上原謙、「血闘(1953)」の三田隆、「女の一生(1953)」の菅井一郎などが出演する。
1953年製作/96分/日本
劇場公開日:1953年12月8日
ストーリー
若いデザイナー春原美子は、パリへの研究旅行の帰り、柔道試合で同じくパリにでかけた栗原と知りあった。朴訥な栗原は、美しく優しげな美子がすっかり気に入り、彼女こそ生涯の伴侶と一人ぎめにきめてしまう。一人の母が急に他界してより一そうその想いはつのった。ある日美子をたずねた栗原は咄々と心のたけをうちあけにかかったが、美子はむろん一笑に附した。彼女には金杉という理解あるパトロンがおり、今度のパリ行も彼女が経営する洋裁店ベレニスの資金もすべて彼のふところから出ている。栗原と彼女のはなしを盗み聴いた栗原の自称子分こそ泥の根住は、親分の恥をすすごうとばかり美子のデザイン・ブックをぬすみだすが、栗原は怒ってかれを投げとばす。パリ一年の苦心も水の泡、と狼狽している最中に、失せ物を届けられた美子は、さすがに感謝をおぼえて栗原をお茶にさそった。偶然現われた金杉を彼女の兄、と言いくるめるが、純真な栗原はつゆ疑わない。するうち、金杉は美子に求婚するが、彼女は返事を帰朝記念のファッション・ショウの後に保留した。美子に栗原を紹介された金杉の妹の桃子は、彼の竹を割ったような魅力に、少女らしいはげしい恋心をおぼえた。が、美子に夢中の栗原は相手にしない。ファッション・ショウの当日、金杉の一件がばれ、彼女の偽善ぶりに怒りを爆発させた栗原は、その頬に平手打ちをくらわせて席をけった。直後金杉は返事をうながすが、今は忽然栗原への愛にめざめた美子には、はっきりした返事はできない。一方彼女をにくみながら思いきれない栗原は、柔道への精進に一切をわすれようとするが、心のみだれか、晴れの全日本選手権大会では決勝まで進みながら敗れさった。その場にかけつけた美子との間に和解がなり、はなしは結婚までいったけれど、金杉の胃穿孔罹患でまたも美子は愛と恩義との板ばさみになる。しかし、金杉は紳士だった。病気平癒とともにすまながる美子と栗原の仲を微笑で祝福し、傍ら妹の失恋をもやさしくいたわるのだった。パリ帰りの最尖端女性美子は、今は純「にっぽん製」栗原の、これも「にっぽん製」女房として、炊事に洗濯にいそしむこととなった。