夫婦(1953)のレビュー・感想・評価
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2つの未遂事案となしくずしの回避。
1953年。成瀬巳喜男監督。結婚6年目で子供がいない夫婦は夫の転勤で都内へ。妻の実家に身を寄せたが兄が嫁をもらうことになって住まい探しを急いでいる。妻を亡くしたばかりの夫の同僚の家に住み込むことになるが、天真爛漫なその同僚と妻が接近し始め、、、という話。
好意を寄せてくる夫の同僚(同居)を契機に、うだつの上がらない夫に愛想をつかす妻がぎりぎりで夫の元へと帰ることを決意し、苦しい家計のなか妊娠した妻に対して堕胎をうながす夫がぎりぎりで出産と子育てを決意する。前者は年の瀬が押し迫るなか(ラストミニッツ)、実家での他愛のない会話がきっかけとなっているものの「決意」というほどのの明確な心の転回があるわけではなく、後者は病院前までやってきた寒空の公園で(これまたラストミニッツ)、ブランコと滑り台で遊ぶ子供の様子をみているもののこれまた「決意」のシーンがあるわけではない。劇的な転回とは異なる道筋によって2つの未遂事案は回避されていく。ほかにも、妻と同僚の浮気を疑う夫が仙台出張を命じられて、家に二人きりで残すことになるなど、「ぎりぎりの瞬間」をいかに構築していくかに注力された映画。そしてそれがよくできていてはらはらする。
成瀬恐るべし
ハッピーエンドで「さあ終わった!」と思いきや、映画はいきなり観客の気持ちを踏みにじる様に千尋の谷へと突き落とす。
こんな脚本を書く水木洋子/井出敏郎も凄いが、それを受け入れる監督も凄い。
映画としてはその前の段階できっちりとハッピーエンドで終わっているのに…。
そんな、うなだれる夫婦の肩越しで無邪気に遊ぶ子供の姿。ここでやっと本当のハッピーエンドが訪れる。
成瀬巳喜男恐るべし!
高度成長時代の昔の日本…特に東京周辺ってあんな感じだったんだなぁ。幼心の朧気な記憶にも在るけれど、どこの家にも間借りしている人が我が家の近所には沢山居ましたねぇ〜。
駄目亭主役の上原謙が何気に上手い。若い頃は2枚目役専門で、演技力はどちらかと言えば無いと言われていた様だが、なかなかどうしてこの作品での猜疑心の強い駄目亭主役は絶品でしたね。
尤も奥さん役の杉葉子さんが素敵過ぎるのが悪いんだが。
ほ〜ら三国連太郎だって、死んだ奥さんが忘れられない男の設定なのに…イチコロだもの。
妻は夫を立てながらも実際は、子供をあやす如くに扱えば夫婦円満…って考え方は、如何にも戦後の日本って感じでしたね。
それにしても成瀬巳喜男…。
恐るべし!
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