「青衣の人」より 離愁
劇場公開日:1960年8月30日
解説
井上靖の『青衣の人』を「朱の花粉」の柳井隆雄と大庭秀雄が脚色し、「朱の花粉」の大庭秀雄が監督したメロドラマ。撮影は「しかも彼等は行く」の長岡博之。
1960年製作/89分/日本
劇場公開日:1960年8月30日
ストーリー
境道介は竹生島を見に行った時、木谷れい子という若い自殺娘を助けた。れい子をつれて道介は、京都にいる同じ陶工の友人山口の家に厄介になった。翌朝電報で東京から駈けつけた彼女の叔母三浦暁子をみて道介は息をのんだ。数年前、暁子が元大臣の次男三浦清高と婚約が整った日、家族の者と一緒に金山陶雨の展覧会を見に行った際、説明役をしたのが弟子の道介だった。それから父の使いで陶雨の仕事場を訪ねるたびに暁子と道介は親しくなっていった。しかし、それも、暁子の結婚でプッツリと切れてしまった。そんな二人の過去を聞いて、れい子は驚いた。琵琶湖での自殺未遂事件も、実は婚約者の八田が机の上に暁子の写真を飾っていたことにショックを受けての出来事だった。このことから、東京に帰った道介のアトリエに暁子とれい子が屡々訪れるようになり、れい子は琵琶湖で初めて会ってから道介を愛していると語った。道介の妻は胸を悪くして信州の実家に帰り、身の回りを世話するおばさんとさびしく暮らしていた。最近のれい子の変り方に八田は心配した。そんな時、暁子の夫はフランスの学会へ出席のため羽田を出発した。それから暁子と道介の逢う瀬が続いた。ある日、二人は深大寺附近を歩いた。道介は暁子がいまだに自分に愛情を持っていることを知り、現在の自分の全部を捨てさる決心をしたが、暁子は二人の周りの人々全てを不幸にして二人の幸福は希めないと言って去っていった。久し振りに訪ねて来たれい子に暁子は、道介とは二度と会わないことにしたと告げる。不安そうに帰って行くれい子もやがては八田と結ばれるだろう。道介もまた暁子の愛が絶望の上に育ったものと知って己自身の生活にもどって行くだろう。