暗殺(1964)

劇場公開日:

解説

司馬遼太郎原作「幕末」の一篇“奇妙なり八郎”より「無頼無法の徒 さぶ」の山田信夫が脚色「乾いた花」の篠田正浩が監督した時代劇。撮影もコンビの小杉正雄。

1964年製作/104分/日本
原題:Assassination/The Assassin
配給:松竹

ストーリー

文久三年、浪士取扱松平主税介は老中板倉周防守に手を回し、目明し嘉吉を斬った罪で追われていた出羽浪人清河八郎を許す一方、風心流の名人佐々木唯三郎に清河を斬る準備を命じた。だが先廻りをした清河は、佐々木の前で北辰一刀流大目録皆伝の腕をいかんなく発揮し、佐々木をうちのめした。松平が清河を知ったのは八年前、清河が熱烈な尊攘論者であった頃であった。だがその清河は、勤王の志士への対策として、守護職に名をかりた浪士隊を組織することを、松平に献案して大赦を受けたのだった。かつて清河と同志であった佐久間たちは、彼の変節に激怒した。松平の命をうけて清河をつけ狙う佐々木もこの話を興味深く聞いた。そして佐々木は清河が嘉吉を斬った夜、彼が妓楼からひいたお蓮にすがりついて錯乱の態であったことを知って、清河を斬ることができると思った。だが、お蓮も、捕吏の拷問にあい斬殺されていた。文武に秀れ天才と呼ばれた彼の言動には、奇怪な事が多かった。弟子の石坂周造も坂本竜馬も、清河の思い出について、薩摩藩士を煽動し寺田屋事件をひきおこしたのみで、倒幕に失敗した時の、一匹狼清河の姿は寂しいものであったと語るのみで、清河の本当の姿を知るものはいなかった。さて、清河立案の浪士組は結成され、清河は同志の批判の中、京へ向った。京へ入ると清河は、自分の野望を遂げんと、尊王攘夷の勅諚をもらい朝廷直轄の浪士隊を作ろうとした。計画通り勅諚をもらい清河幕府を樹立した清河に、幕府の面々はあわて、再び佐々木が使わされた。執念の鬼と化した佐々木は、一夜酔った清河の背後を襲い一匹狼清河の命を奪った。

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映画レビュー

3.5物語そのものよりも映像の美学を堪能すべき作品であると思います

2022年11月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

1964年松竹、白黒作品

篠田正浩監督作品

誰の暗殺?
幕末ものだから、坂本龍馬?井伊大老?
違います
清河八郎という人物です

この名前を知っている人は結構な歴史好き、特に幕末もの、新撰組ものに詳しい人でしょう

原作は司馬遼太郎の歴史小説「奇妙なり八郎」
この原作小説自体、あまり有名でもありません

つまり一般的には無名です
実在の人物です
新撰組の母体となった浪士組を幕府に提案し実現させ、234名の浪士を率いて江戸から京都に乗り込んだ人です

結局のところ、丹波哲郎が演じるこの人物が題名の通り幕府に暗殺されるまでの物語です

有名どころは坂本龍馬が少し登場する程度です
近藤勇、土方歳三などは名前のみ一言台詞にでるだけです

お話も幕末ものが好きで予備知識があるなら楽しめもできますが、そうでなければ退屈な時間になるかも知れません

しかし撮影が尋常ではありません
恐ろしく鮮明なカメラが大胆なアングルで、美しい陰影をもって撮られています
冒頭からその映像にハッとさせられます
物語そのものよりも映像の美学を堪能すべき作品であると思います

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あき240

5.0篠田正浩の最高傑作

2022年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

傑作である。ポスターはカラーだが白黒作品である。白黒作品だからミステリアス感がよく出ている。脚本が「戦争と人間」、「栄光への5000キロ」、「内海の輪」の山田信夫だが、この人は駄作も多いが、この作品は橋本忍脚本の「切腹」を彷彿とさせるタッチで最後まで飽きさせない。篠田正浩33歳のときに撮ったものなので、溌溂とした作品に仕上がっている。1964年公開だが、58年後の2022年に見ても実に面白い作品である。良い作品は古くならないどころか熟成するものらしい。黒澤明監督の「七人の侍」、工藤栄一監督の「十三人の刺客」や「大殺陣」も何度見ても飽きないのと同じだ。さて、内容は、新選組はこの男が居なかったら決して生まれることはなかった清河八郎の、浪士組結成から暗殺されるまでを、関係者の思い出話で構成したものである。司馬遼太郎原作なので半分は嘘八百ではあろうが、「羅生門」の語り口スタイルで、愛人、徳川幕府要人、門弟、坂本龍馬らの証言から、清河八郎像を追っていく。暗殺実行者の佐々木只三郎は、門弟の面前で清河八郎に二度も打ちのめされ恥をかかされ憑かれたように清河八郎を殺したいと思うようになる。この殺害動機を幕府要人が利用して清河八郎は暗殺され映画は終わる。清河八郎という人物は、すべての「新選組」物語で、幕府を裏切ったいい加減な人物という地位が確立しており、映画演劇でその実像が語られることは稀なのであるが、この不人気者をこの映画は真正面から取り上げており実に興味深い。丹波哲郎、岡田英次、早川保、岩下志麻、木村功、佐田啓二、そして後年演出家として名を成す蜷川幸雄らが生き生きと動き回っていて楽しい。篠田正浩の最高傑作であろう。

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hjktkuj

3.5奇妙なり八郎

2021年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作、司馬遼太郎「奇妙なり八郎」。しかし司馬さんは、みごとに清河八郎を一言で表すタイトルをつけたものだ。
映画は、原作をなぞらえた進行で出来上がってはいるが、監督の好みなのか、若干印象が異なる。竜馬が標準語に近いのもいただけない気がした。
前途洋々の男が最後に寝首を掻かれる如き終焉を迎えるのは、初期司馬作品によくみられる作風。そんな、うさん臭さが強すぎて気の毒に見えない主人公、清河。受けた恥辱の感情が歪んでいくように、清河を斬ることに囚われた佐々木唯三郎。この二人の対比は、これまた「梟の城」の二人を思わせる。
個人的な清河のイメージは、弁舌さわやかなれどもどうも実の伴わない高説を自信満々に謳いあげる鼻持ちならぬ美男子。ついで言えば、佐々木=ヒョロリ長身で冷徹でめっぽう腕の立つ官吏、山岡=ガッチリした体躯で強いながらも澄んだ眼力を持ち人を疑うことを忘れた好人物、となる。だから、この映画のキャスティングと微妙に異なる。

清河は、勤皇の同士との酒宴の席で「魁がけて またさきがけん 死出の山 まよいはせまじ 皇(すめらぎ)の道」と一句詠む。"清河幕府"を立ち上げる!とはなんともまた壮大な話で、その大風呂敷に違和感を抱かない時点で、連れ立つこの衆愚たちは清河の弁に危うさの欠片さえ覚えずに、陶酔しきっていたのだろうなあ。たぶん、徳川幕府創成期における由比正雪も、このような男だったのではないだろうか。

史実、結局清河は佐々木に討たれた。常日頃、佐々木は、弁を操り策を弄する清河を胡散臭さの塊のように憎んでいただろう。北辰一刀流の大目録皆伝をとるほどの達人ともあろう清河が、自身の近辺から敵意を持って伺う眼差しに気づかなかったのは迂闊だったのだ。小説では、最後に佐々木が「清河、みたか」と吐き捨てる。そこに田舎郷士に後れを取った腹いせが垣間見える。ただこの暗殺というクライマックスシーンを描くにおいて、映画では、待ち伏せて出くわす場面からしかない。"酒の香りがむせる"、とナレーションでも言った通り、それは直前に上之山藩士金子を訪れ酒を振る舞われた帰りであり、だからこそこに清河の油断(司馬は"素朴"と表現している)があったわけで、佐々木一党が現れた時点で、観客にも「しまった」と思わせるためには、振舞い酒の場面が欲しかったなあ。

それにつけても、さすが’64の作品だけあって、江戸や京都の街並みの風情を残すロケ地の良さよ。今、この映画を撮り直すとしても、あんな泥臭くって狭っ苦しくて古ぼけたセットなんぞ作れやしまいなあ。これだけでも一見の価値あり。

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栗太郎

5.0呆気なく終わってしまった。

2016年7月31日
Androidアプリから投稿

呆気なく終わってしまった。

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もっもしー
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