劇場公開日 1967年12月6日

父子草のレビュー・感想・評価

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4.0『父子草』はナデシコの別名

2023年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

映画タイトル『父子草』はナデシコの別名らしいが、中年労働者と予備校生が出会って喧嘩から始まって、赤の他人の二人が親子のような親近感を……という内容にピッタリだと思う。

赤の他人の労働者を渥美清、予備校生を石立鉄男、二人が出会うおでん屋女将を淡路恵子が演じ、石立鉄男の友人として星由里子。
映画を観ていくうちに、このキャスティングも内容に見事にマッチしていると気付く。

踏切近くのガード下におでん屋がある。そこで歌を歌っている客がいる。これが中年労働者の渥美清、おでん屋の女将(淡路恵子)に「まずいおでんだ」とか「おい、ババア」などと悪態をついている。
このあたりの渥美清は、とても感じ悪くて「なんだなんだ?」と思ってしまう(^^;

そこに予備校生の石立鉄男(若い!)がおでんを食べに来て、渥美清と喧嘩になる。若者と中年男の喧嘩は中年男じゃ勝てない。その後、毎日、おでん屋にやって来る中年男は、威勢は良いが実は寂しい男。佐渡生まれで、妻子と別れて戦争に行き、捕虜としてシベリア送りなどで苦労して帰国したら、妻は弟と結婚していた…という哀しい男。
その経緯を描く佐渡シーンは「帰国兵(渥美清)と父親(浜村純)との再会喜び、妻の再婚を知る…」というのを映像で見せるが、一切のセリフを排除し、映像と音楽だけで語りきるという凄さに圧倒される。丸山誠治監督の手腕が光る。

中年男と予備校生の関わりも「つっけんどん」に見えるが、相手への思いやりを感じる。
予備校生を慕う無邪気な娘=星由里子(これまた若い!)が、こんなに可愛いなんて…(笑)

いやぁ~、こういう映画を観て、隅々まで素晴らしくて全編にわたって感動の涙を流せるとは、日本人に生まれて良かった!(笑)

<映倫No.14125>

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たいちぃ

4.0プロトタイプ寅さんは"生きていた英霊"?!  妻子と決別した初老の日雇い人夫が出会ったもう一人の"息子"と育む親子愛の物語

2022年8月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 渥美さんといえば兎にも角にも『男はつらいよ』シリーズですが、そのTVシリーズが68~69年、劇場版第一作が69年ということで、寅さんのイメージが確立する以前の主演作品です。
 とはいいつつも本作の中に於ける主人公は"喧嘩っ早くてぶっきらぼうだけど人情に篤い"というまさにその後の寅さんの原型とも言えるキャラクターでありつつ、その一方で戦争で人生を大きく狂わされた悲しい過去を背負ってもいる複雑な人物です。
 そうして家族も持たぬまま飯場を行ったり来たりの初老の男が出会った人々との交流で見つけた余生の生き甲斐と愛でる花。

 本作の出色は、なんといっても全体としては朗らかな人情物語に仕上がっている一方で、戦争がもたらした悲劇がその中心に強く根ざしていることでしょう。
 本作の主人公である平井ですが、今でこそ妻子無しの気ままな日雇い人夫生活を送っていますが、かつては故郷である新潟県佐渡市で妻と幼い息子を養いつつの漁師生活でした。その全国何処にでも有る小さなしかし確かな幸せが、戦争への従軍によって途絶してしまいます。
 故郷に残してきた妻子に再び相見えることだけを夢見て戦地の地獄にも虜囚の辱めにも耐えてきた平井ですが、遂に帰国した彼を迎えてくれたのは年老いた父だけであり、待っていたのは既に妻子が自身の弟と再婚しているという残酷な現実でした。音信不通ゆえに死亡宣告されていたものの実は生き延びていたという”生きていた英霊”です。
 その彼がおでん屋台で偶然会った苦学青年と喧嘩する中で奇妙な友情を結び、彼を"我が子"と見做して支援する中で生き甲斐を見出し、彼の恋人やおでん屋の女将とまるでもう一つの「家族」のような関係を築いていく様が鮮やかで生命力に満ちている秀作です。

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O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)

3.0昭和25年に帰還

2022年8月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

主人公(渥美清)はシベリア抑留者で、帰還したのは昭和25年、妻は弟と再婚していた。
戻る家を失い、飯場を渡り歩いていたが、あるとき、浪人中の若者(石立鉄男)と知り合う。
会うこともできない息子の代わりに面倒を見ることに。
屋台のおでん屋をやっている淡路恵子がいい味を出している。

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いやよセブン

3.5やはり、渥美さんはいい役者

2020年5月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

これは、「寅さん」シリーズの放送、映画の原点ではないか。 寅さんシリーズに通ずる人情映画、戦後色を残したエピソードのある人情話で、年寄りには最後まで飽きずに見れた良作だった。 山田洋二監督は、木下恵介脚本になる本作にヒントを得て、「寅さん」を生み出したのでは、と勝手に想像した。

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chakurobee