刺青(1966)のレビュー・感想・評価
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4K 修復の値打ちが最高にあった作品です
日本のファムファタルとはどんな女なのか?
それが本作のテーマです
若尾文子の吸い突くような弾力のある乳白色の肌を宮川一夫のカメラが撮る
その映像を愛でる映画です
じっとり汗が滲んで良い匂いを放つ肌をこれでもかとシズル感タップリにひたすら撮る
入浴シーンは魂消るほど
舞台は江戸時代
手代の新吉と駆け落ちしようとするも騙されて売り飛ばされた大きな質屋の娘お艶が主人公
その肌に江戸一番の腕を持つ刺青師清吉が執着するのです、千年に一度の肌だと
彼は麻酔で気を失ったお艶の背中に精魂を傾けて女郎の顔を持った毒蜘蛛を彫ります
リズミカルに刺青の針を入れる
するとお艶は気を失っていても痛みで小さく声を出します
痛みの声のはずなのにそれが愉悦の声と表情に感じられてしまうのです
なんというエロチックさ!
やがて朝がきて彫り上がった女郎蜘蛛の刺青は、彼女の艶めかしい背中の上で、まるで生きているかのように動いて見えるのです
その刺青を彫る前に、このような台詞が交わされます
彼女を買った徳兵衛が壁に掛けた仏教画の画幅を指差してお艶にいいます
それは多数の屍骸の中に白く美しい観音様が立っている絵です
原作ではその絵には「肥料」という題がついています
この絵は面白い絵だ
美しい女が、多くの男達の骸を足の下に踏んで、そいつ等の血や脂を肥やしに生き生きと栄えている絵だ
おめえにそっくりなこの女を視ろ!
顔を無理矢理に向けされられた、その顔の美しいこと!
やがて芸者としてお艶は働かされ、徳兵衛に稼ぎを吸い取られるのですが、まるで背中の女郎蜘蛛の刺青が糸で獲物を絡め取るかのように男達を手玉に取りだすのです
やがて被虐と加虐が目まぐるしく入れ替わりはじめていくのです
最終的には彼女にかかわった男達はみんな死んでしまうのです
その刺青を彫った清吉までも
この蜘蛛は生かしちゃいけねえんだ!
お前の命を吸い取ったんだね!誰より先に!
いい気味だ!
見事な作劇で退屈はありません
原作は谷崎潤一郎の短編小説「刺青」
但し「しせい」と読むそうです
谷崎の処女作です
それを増村保造監督と脚本の新藤兼人の溝口健二の弟子二人で膨らましてその世界を完全映画化しています
そう書けばどれほどのレベルか知れようもの
4K 修復の値打ちが最高にあった作品と思います
若尾文子
新助(長谷川)は闇討ちに遭い、殺されそうになるが逆に相手を殺してしまう。さらにお艶(若尾)をやくざの徳兵衛(内田朝雄)に売った船頭の権次(須賀不二男)を殺す。とにかく女郎蜘蛛を彫られたお艶に男は気が狂ったように惚れるため、荒稼ぎをする徳兵衛。そして旗本芹沢(佐藤慶)も彼女に惚れ、妾にしようとしたため大きな勝負に出る徳兵衛だったが、返り討ちに遭い、殺されそうになる。そしてとどめを刺したのがやはり新助。都合3人を殺してしまい、罪悪感と自責の念が彼を苦しめる。そして、自分以外の男とも寝ていると知ると、お艶と心中しようとするが、逆にお艶に殺されてしまう新助。さらに彫ったことを悔やんでいた彫り師清吉(山本)が、その悪の根源である刺青を無くすためお艶を刺す・・・もうドロドロ。
音楽が最初から怪談のように気味悪い。それが効果を出して、映像さえもドロドロの怪談のような雰囲気。すごい映像だと思っていたら、やはり宮川一夫。なかなか面白いぞ。
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