刺青(1966)のレビュー・感想・評価
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若尾文子… エロい… エロすぎる… なのに…
若尾文子… スゲエ…
あれは、もう殆どone and only…
映画の内容それ自体はVシネとかでも如何にも有りそうな話なのに、若尾文子が演じてしまうと格段にグレードアップしてしまう。
艶やかで淫蕩で悪女で、あんなに絢爛な品性があるとは…
あと、あの旗本役の佐藤慶の傲慢でワルイ感じ、イイねえ〜ニクイねえ〜
彼が存在することで、淫蕩な女に傾倒していく若尾文子が、より際立ったのは間違いない。
そして兎にも角にも、あのオープニングの濃密な密室の空気感をワイドなシネマスコープで、妖艶にディープに映し出した宮川一夫!まさに光と陰の職人!
しかし、やや残念なことに、新藤兼人にしては、ちょっと脚本の詰めが甘い。
権次が裏切るのは、最初から分かりきっているのに、お艶が売られるまで、意味もなく(特に伏線もなく)ダラダラと日数が過ぎたり…
また、お艶の恋人の新助は暖簾分けしてくれる予定もあった訳で、真面目なだけでなく抜け目なく仕事も出来たハズ。よって、権次の悪巧みには直ぐ気付きそうなものだろう。
ストーリー的には嵌められないとダメだが、もうちょっと人物設定とプロットには工夫して欲しかった。
そして一番残念だったのは、本作品で最も肝となるハズの、彫り師の清吉が、お艶の白い足に出会い執着してしまうシーン。
あれが全く衝動的なショットになっていない。
出来れば原作と同様にして欲しかったが、そうでないにしろ、もっと印象的に、舐めるように、お艶の白く美しい足が色気立つショットでないと、全然ダメに決まってる!
あんなんじゃ、清吉の強烈な動機が殆ど見えてこない。
こういうところは確かに、やり過ぎてしまうと無粋だが、あれじゃ、あまりに素気なさすぎて「え?こんだけ?」となってしまう。
あと女郎蜘蛛の刺青のデザイン、もっと妖しくも禍々しい凄みが欲しかった。
あれじゃ、ちょっと卑近で下卑な感じだったなあ。それが狙いだったかもしれんけど。
しかし、今回の4K特集上映、なんで『卍』上映してくれなかったかな?
何かリマスター化できない事情でも、あった?
4K 修復の値打ちが最高にあった作品です
日本のファムファタルとはどんな女なのか?
それが本作のテーマです
若尾文子の吸い突くような弾力のある乳白色の肌を宮川一夫のカメラが撮る
その映像を愛でる映画です
じっとり汗が滲んで良い匂いを放つ肌をこれでもかとシズル感タップリにひたすら撮る
入浴シーンは魂消るほど
舞台は江戸時代
手代の新吉と駆け落ちしようとするも騙されて売り飛ばされた大きな質屋の娘お艶が主人公
その肌に江戸一番の腕を持つ刺青師清吉が執着するのです、千年に一度の肌だと
彼は麻酔で気を失ったお艶の背中に精魂を傾けて女郎の顔を持った毒蜘蛛を彫ります
リズミカルに刺青の針を入れる
するとお艶は気を失っていても痛みで小さく声を出します
痛みの声のはずなのにそれが愉悦の声と表情に感じられてしまうのです
なんというエロチックさ!
やがて朝がきて彫り上がった女郎蜘蛛の刺青は、彼女の艶めかしい背中の上で、まるで生きているかのように動いて見えるのです
その刺青を彫る前に、このような台詞が交わされます
彼女を買った徳兵衛が壁に掛けた仏教画の画幅を指差してお艶にいいます
それは多数の屍骸の中に白く美しい観音様が立っている絵です
原作ではその絵には「肥料」という題がついています
この絵は面白い絵だ
美しい女が、多くの男達の骸を足の下に踏んで、そいつ等の血や脂を肥やしに生き生きと栄えている絵だ
おめえにそっくりなこの女を視ろ!
顔を無理矢理に向けされられた、その顔の美しいこと!
やがて芸者としてお艶は働かされ、徳兵衛に稼ぎを吸い取られるのですが、まるで背中の女郎蜘蛛の刺青が糸で獲物を絡め取るかのように男達を手玉に取りだすのです
やがて被虐と加虐が目まぐるしく入れ替わりはじめていくのです
最終的には彼女にかかわった男達はみんな死んでしまうのです
その刺青を彫った清吉までも
この蜘蛛は生かしちゃいけねえんだ!
お前の命を吸い取ったんだね!誰より先に!
いい気味だ!
見事な作劇で退屈はありません
原作は谷崎潤一郎の短編小説「刺青」
但し「しせい」と読むそうです
谷崎の処女作です
それを増村保造監督と脚本の新藤兼人の溝口健二の弟子二人で膨らましてその世界を完全映画化しています
そう書けばどれほどのレベルか知れようもの
4K 修復の値打ちが最高にあった作品と思います
夢に見そうな若尾文子の“お艶”
若尾文子映画祭で観賞。
全編、絵画的な美しい構図と光と影のコントラスト。
(撮影:宮川一夫)
本作の初の4K復刻版公開が、今回の映画祭の目玉になっている。見事な解像度でスクリーンに映えていた。
谷崎潤一郎の小説の主人公は女郎蜘蛛を掘られて人格が豹変してしまうのだが、映画のお艶は使用人と駆け落ちしようとする最初から肝の据わった娘だ。
若尾文子に合わせた脚色なのだろうか。
(脚色:新藤兼人)
若尾文子の少し低いトーンの声は、時にドスがきいていて、時に甘ったるくて、なんとも不思議な魅力がある。
あの当時は時代劇が多かったので、スター女優はみな和服での所作が美しいのだが、本作の若尾文子は格別の色気。
若尾文子の魅力を知り尽くした増村保造監督の演出が冴え渡っている。
山本學(当時は、学)の青白い狂気の芸術家ぶりと、佐藤慶のスケベ旗本ぶりがはまっていた!
若尾文子
新助(長谷川)は闇討ちに遭い、殺されそうになるが逆に相手を殺してしまう。さらにお艶(若尾)をやくざの徳兵衛(内田朝雄)に売った船頭の権次(須賀不二男)を殺す。とにかく女郎蜘蛛を彫られたお艶に男は気が狂ったように惚れるため、荒稼ぎをする徳兵衛。そして旗本芹沢(佐藤慶)も彼女に惚れ、妾にしようとしたため大きな勝負に出る徳兵衛だったが、返り討ちに遭い、殺されそうになる。そしてとどめを刺したのがやはり新助。都合3人を殺してしまい、罪悪感と自責の念が彼を苦しめる。そして、自分以外の男とも寝ていると知ると、お艶と心中しようとするが、逆にお艶に殺されてしまう新助。さらに彫ったことを悔やんでいた彫り師清吉(山本)が、その悪の根源である刺青を無くすためお艶を刺す・・・もうドロドロ。
音楽が最初から怪談のように気味悪い。それが効果を出して、映像さえもドロドロの怪談のような雰囲気。すごい映像だと思っていたら、やはり宮川一夫。なかなか面白いぞ。
さすが黒沢、溝口が愛したカメラマン
はっきり言ってエッチなものを見ようと思ってレンタルしました。
が、最初のところの絵(映像)を見て
・・・うっ美しい・・・
と思い、映画を見るモードに切り替わりました。
この映画はストーリーとしては退屈しない程度。
・・・ですが、とにかく絵がいいです。
それもその筈、黒沢が溝口が常用した宮川一夫がカメラマンです。
特に溝口監督は宮川の撮る絵があまりにも素晴らしいということでカメラアングルを全く指定せず、宮川の好きなように撮らせていたとのことです。
この映画は宮川のカメラと若尾文子の色気が見事に融合した作品だと思います。
色気命
みたいな映画で成功してる作品はあまり見たことがないので、高く評価しました。
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