侍(1965)のレビュー・感想・評価
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二番煎じに「三船マジック」
本作は岡本喜八監督の代表作の一つ、とされているが、
10年早く『侍ニッポン 新納鶴千代』というタイトルで公開された作品を原案としている。
しかも、オリジナル作品は主題歌『侍ニッポン』までヒットしているから面白い。
東千代之介を主役に配したオリジナル版、ぜひ見たいものだ。
三船敏郎に無頼のサムライを演じさせたら、右に出るものはないだろう。
とにかくチャーミングなのだ。
桜田門外の変を題材にした奇譚なのだが、
全編「三船マジック」で彩られている。
小林桂樹、伊藤雄之助、新珠三千代、東野英治郎、
八千草薫、天本英世、黒沢年男…
本当にすごいキャスティングだ。
おすすめしたい一作。
なにをか言わんや!おや?
『しょうふく』の血筋の犬侍の一期一会を、借金したの女性相手に本当の話をするか?ましてや『椎茸ババァ』をどう話したんだろう!
分かりやすく説明するのは良いが
『お菊さん』の存在の意味する所が分からん。
さて 水戸藩の天狗党とおぼしき集団の一味が曰う
『井伊大老にも栗原に流れる血も大して変わらぬ。もう少し頭を冷やせ』それで
で決行されたのが『桜田門外の変』
ただの『変』であるが、これが『明治維新』の始まりと考えて
『侍日本』が『侍JAPAN』になった。
1968年が日本のターニングポイントで、その100 年を記念して作られた寓話。明治元年から100年。つまり、明治維新に対する『226事件』と同様な判官贔屓な古来の解釈だ。これで長州、薩摩の幕藩体制の『明治維新』に突入すると。
なにをか言わんや!おや?である。
あくまでも明治維新の一説である。
ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟か!
そんな格好良い愚行ではない。
アイデンティティもナショナリズムもイデオロギーも無いまま、混沌として大日本帝国へと迷走を大和民族はひた走るのだ。但し、ここで描かれた話は、三島由紀夫先生の『豊饒の海』の中で描かれる『首都崩落計画』と全く同じ。1960年の安保と比較するのは些か違うと僕は感じる。
侍ニッポン
栗原が内通の裏切り者!と頼まれて辻斬りのごとく男を斬った三船敏郎。しかし、裏切り者は別にいた・・・親友を斬ったという心の葛藤。
決行は3月3日、桃の節句にしては珍しく雪が降っていた。父親を知らず、侍の妾腹の子だったという負い目と結果を出すための野心。相模屋の女将お菊との恋愛も浪人を脱したら娶るという不安なものだ。腕一本で名を上げることしか興味なかった男が、実は井伊直弼の子だった・・・と、東野英治郎がひた隠しにしていた事実・・・結局、父親とは知らずに首をとった男は歴史にも名を刻まれてない。
橋本忍の脚本で、岡本喜八監督が東宝のスーパースターから名脇役まで欲しいままに使って撮るのだから面白く無いわけがない
素晴らしい!!!堪能した!
本格のそれも骨太の時代劇を観た満足感がある
岡本喜八監督初の時代劇作品
1963年「江分利満氏の優雅な生活」、1964年「ああ爆弾」と来て1965年が本作
代表作の「日本のいちばん長い日」は1967年の作品になる
本作にはそのドキュメンタリータッチがすでに濃密にあるのだ
冒頭の雪の桜田門のナレーションの「江戸城には総じて36の門がある」からしてドキュメンタリーで行くぞとの宣言でゾクゾクする
それを襲撃側の書記官の記録として大変にスマートに処理してある
前半は内通者は誰か?から主人公の新納鶴千代についての説明が延々と展開される
しかしこれが面白い
後半はいよいよその本当の正体があきらかになったときクライマックスの桜田門外の変に雪崩れ込む
その乱闘の迫力たるや!
息をするのも忘れる程だ
主人公の三船敏郎、ヒロインに新珠三千代
小林桂樹、東野英治郎、八千草薫、平田昭彦、
中丸忠雄、天本英世、藤田進、志村喬とまあ、呆れるほどの豪華な東宝オールスター総出演
翌年ウルトラマンのイデ隊員でブレイクする二瓶正也の顔もみえる
三船敏郎はさすがの超重量級で、画面に映っているだけで映画になる
伊藤雄之助が演じる星野監物の血の冷たい怪演も心に残った
主人公の血の熱さとの対比が良く際立っている
肝腎の桜田門のセットも巨大で如何に東宝が金を掛けているか、期待を掛けた超大作であったか分かろうものだ
本作は1965年1月3日の公開
黒澤明監督の「赤ひげ」は同年4月3日の公開
しかし本来は1964年の年末封切りの予定であった
撮影は大幅に遅延し、「三大怪獣 地球最大の決戦」がその穴埋めに製作されたことはあまりにも有名
さらに延期につぐ延期で結局4月公開になったのだ
実に撮影開始から丸2年のことだという
つまり三船敏郎は「赤ひげ」の撮影と、本作の撮影が一時期被ったということだ
「赤ひげ」での彼の出演シーンが先にクランクアップしていたのだろうか
黒澤明監督はその「赤ひげ」が大ヒットし、世界的映画賞を幾つも獲得するのだが、東宝に取っては予算も公開スケジュールも大幅に超過するどころか、どうなるかも皆目分からないという扱い辛い監督との烙印を押されてしまう
よって三船敏郎主演映画は「赤ひげ」が最後になってしまった
それに対して岡本喜八監督は綿密な計画性を持って撮影を行う
しかも黒澤明監督にも見劣りのしない映画を撮れる
本作は正にそれだ
原作は過去に4作も映画が撮られたギリシャ神話のオイディプスに題材をとったお話
それを橋本忍が脚本にして、岡本喜八監督が東宝のスーパースターから名脇を欲しいままに使って撮るのだから面白く無いわけがない
桜田門外の変は1860年のこと
品川宿の相模屋が劇中に登場する
映画ファンなら川島雄三監督の1957年の作品「幕末太陽傳」の舞台となった大きく立派な出会い茶屋とすぐに気がつくはず
英国大使館焼き討ち事件は1963年のことだから、本作はその3年前のお話になる
岡本喜八監督の次の時代劇作品は1966年の「大菩薩峠」になるが、それも舞台の時代は1860年
明治維新へのこだわり?
いや60年安保の丁度100年前が1860年だからだろう
その出発点だという意味だったと思う
井伊大老が言う「侍が無くなってしまう」
親友の栗原栄之助の夢見る日本が目指すべき社会
水戸浪士のいう国際情勢を鑑みた上での大儀
しかしそれらこれらも突き詰めてみれば、結局のところ徳川のお家騒動に過ぎないと主人公に身も蓋も無いことを喝破させているのだ
自分には、なにやら60年安保闘争の構図を俯瞰して揶揄しているようにそれらが聞こえるのだ
もっともっと高く評価されるべき作品だと思うがしかしこの暗喩が足を引っ張るのか、「赤ひげ」の影に隠れてしまうのか、岡本喜八の傑作として取り上げられることが少ない
正しく評価されるべきだ
運命のいたずらとは正にこのこと
三船敏郎演じる主人公の人生がとにかく悲しい。運命とは残酷で容赦がない。
「桜田門外の変」を橋本忍が大胆な解釈を加え脚本を書き(原作は侍ニッポン)、三船との仕事も多い岡本喜八が監督した傑作時代劇。
特にラストの大雪の中でのアクションシーンは邦画史を代表する名シーンと言っていい。
侍三船…炸裂!野望の豪剣!!
DVDで鑑賞。
時は幕末―。水戸藩・天狗党は、幕府大老井伊直弼の暗殺を企てていた。尾州浪人新納鶴千代は手柄を立てて、二本差の立派な侍として立身するため、井伊暗殺計画に参加することを決めた。だがこの新納、自身も知らない出生の秘密があり…
岡本喜八監督が主演に三船敏郎、他東宝オールスターを配して製作した時代劇アクション巨編。桜田門外の変を題材に、ひとりの侍が抱く野望と過酷な運命が描かれました。
天狗党内に井伊直弼と繋がっている裏切者がいることが判明し、その容疑者として名前が挙がったのが、新納とその親友栗原。栗原の容疑が濃厚となり、首領より殺害を命じられた新納は、苦渋の決断で決行。死闘を制して栗原を斬りましたが、それは冤罪だったことが判明しました。首領に詰め寄った新納でしたが、大事を成して手柄を上げようとするなら、血も心も冷たくなければならないと言われてしまいました…
侍とは、冷血非情でなければならぬ存在なのか…? 苦悩の末、新納は友のために必ず井伊直弼の首級を上げると誓い、大吹雪となった端午の節句、雪深い桜田門外に向かう…
が、しかし、新納には彼自身も知らない出生の秘密が隠されていました。なんと云う凄絶な運命なのか…。野望の豪剣が狙った相手はまさかの…! 果たして"侍"とはなんなのか?
調布市に建設されたと云う桜田門外のセットで展開された、クライマックスの壮絶な乱闘シーンに心を奪われました。
吹きつける大雪の中を、敵味方入り乱れての激しい殺陣!
雪を染める鮮血!
唸る三船の野性味溢れる刀捌き!
縦横無尽なカット割り!
―どれかひとつでも欠けていたら成立していなかったであろう迫力に、度肝を抜かれました。
※修正(2022/03/07)
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