女系家族のレビュー・感想・評価
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遺産を巡る人間模様
Amazon Prime Video(KADOKAWAチャンネル)で鑑賞。
原作は未読。
大阪船場の老舗の遺産相続を巡り、欲深い三姉妹とその周囲が繰り広げる骨肉の争いを、死んだ主人の愛人が掻き乱す。
山崎豊子原作なだけあり、相続に関する当時の法律に則ったリアルな描写に人間ドラマが上手く絡んで面白かったです。
京マチ子や若尾文子らの美の共演とドロドロの人間模様を繰り広げる演技合戦が見応え充分。都合が悪いと耳が遠くなってしまう(笑)中村雁治郎の演技と存在感も最高でした。
愛人(若尾文子)がいちばんしたたかなことが分かるラストの逆転が、痛快であると同時に虚しさを漂わせるのが絶品。
上手く立ち回ったのに、全て水泡に帰した大番頭(中村雁治郎)の、呆気に取られた表情がこれまた名演でした。
女系家族において死んだ主人は肩身が狭かったと思われ、遺言と愛人を通して復讐を果たしたと云うことかな、と…
立場と家柄に固執していた長女(京マチ子)が、憑き物が落ちたように新たに歩み出すラストシーンが良かったです。
本当の主役は???
昔の船場の言葉遣いが分かりにくいところが所々あったが、無駄な描写の無い締まった映画。原作の面白さを脚本が更に活かしている。若尾文子がとにかく可愛らしい。大半の登場人物が欲深い人達ばかり。本当の主役は、セリフはゼロだったが天国の4代目かもしれない。
欲深家の女族
大阪船場の老舗問屋・矢島商店は、代々続く女系の一族。
婿養子であった当主が死去。
遺産相続を巡って、血生臭い殺人事件が…起こりはしない。名探偵も登場しない。
原作は横溝正史ではなく、社会派小説の女王・山﨑豊子。
殺人事件は起こらないが、女たちの愛憎や欲渦巻き、ある意味こちらの方がリアルで恐ろしいかも。
当主の娘は、三人。
出戻りの長女、婿養子を取って家業を継ぐ次女、花嫁修行中の三女。
お金のみならず、所有する家屋や山林、その他諸々含め、遺産総額は莫大。
親族が集った遺産相続の会議の場。遺言書が読み上げられ、一見平等に割り振られた筈だが…、
これに異を唱えたのが、長女。
次女に分があると言い出し、“長女”という立場や法を持ち出し、差額分を要求。この長女がとにかくがめつい。
黙っていられないのが、次女。姉は早々と家を出、家業を継いだのは自分。今度ばかりは姉のワガママにはさせない。
三女は欲深い姉たちにうんざり。が、伯母が後ろ楯に付く。
ここに、思わぬ人物が。
父には妾が居た。
今、某俳優の不倫が大問題になっているが、昔も今も、男ってバカなのかね…。
二通目の遺言書により、この妾にも遺産分配権が。
何でこんな何処ぞの者か分からない牝猫に!?
いがみ合ってた一族の女たちだが、こういう第三者が現れると強固に手を組む。
その都度その都度妾を呼び出し、時には押し掛け、ネチネチ嫌みや実力行使に出る様は、怖ぇ…。
そんな時、認めたくない事実が発覚。妾が、当主の子を妊娠していた…!
身内バトル、はたまた姉妹vs妾。
この女の争いに介入するは、男たち。
当主や一族の信頼厚く、遺産執行人を仰せつかった番頭。
腰低く、誠心誠意仕える善人面の陰で、おこぼれを戴こうと虎視眈々。
また、長女の踊りの二枚目先生。長女に協力するが、その腹の中は…?
一ヶ月後、再び開かれる遺産会議。
各々、策略や態勢を整える。
その会議の場で、最後に嗤ったのは、意外過ぎる人物であった…!
金の切れ目が縁の切れ目と言うか、大金が争いの火種と言うか。
腹黒い女たち、醜い人間模様。
一族の女たちで妾の家に押し掛け、妊娠中絶を強行させる様は、外道!
風刺や皮肉が込められながらもエンタメ性もたっぷりの山﨑豊子の小説を、娯楽映画の匠・三隅研次がさすがの手腕で捌いている。
京マチ子、若尾文子ら名女優たちが女の争いを繰り広げると同時に、美の競演で作品を華やかにしている。
二代目中村鴈治郎の狸爺ぶり、田宮二郎のニヒルな二枚目ぶりも印象的。
クライマックスの決戦遺産会議。
各々の権利や主張を譲らぬ姉妹たちに、番頭が不意打ち攻撃。
しかしそこに、妾が生まれたばかりの子を抱いて現れ、さらには当主の子であるという認知書と三通目の遺言書を伴って…!
呆気に取られる欲深一族たち。
これまで散々虐げられながらも、最後の最後でまんまと総遺産の半分を奪い去った妾。
最後に嗤ったのはこの妾…ではない。
生前は亡き妻や娘たちに存在を軽く見られ、拠り所は妾だったのであろう。
亡き後にしてやったり!…墓の下で嗤っているに違いない。
でも娘たちもこれを受けて、しっかり自分たちの力で生きていく事も忘れずに描いている。
さすがの面白さであった。
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