斬る(1962)のレビュー・感想・評価
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市川雷蔵と大映時代劇
明らかに東映チャンバラ映画と違う。これが大映風なのかなあ。
柴田錬三郎作品の物悲しい風合いが、美男子雷蔵と見事に重なる。新藤兼人の脚本に無駄がなく、ハッとするカメラワークや女性の着物の鮮烈さも良いね。ラスト近くの上から見下ろし、襖を開けていくシーンが気に入った。
草地での決闘はクロサワへの意識ありあり。その落ちも凄いが、もう少しアップでも。当時だとこれぐらいが限界だったか?
和服の女性のお姫様ダッコは、何か笑ってしまった。似合わなくないか?
ということで色々語れる作品は、良品のしるし。
眠狂四郎の原形がここに始まっています
傑作です
冒頭から異常な緊迫感が終盤まで続いていきます
新藤兼人の脚本は見事な構成です
まるで研ぎ澄まされた剣のように無駄がないのです
時代劇と言えばチャンバラ
本作はそのチャンバラそのものに焦点が当てられています
しかし剣劇ではなく、その刀のもたらす鋭さそのものを描いています
市川雷蔵の殺陣は正直甘く感じます
しかし、中盤以降のニヒルな演技はそんなことをどうでもよいことだと言い切れる凄さです
明らかに眠狂四郎の原形がここに始まっています
或る邪剣の生涯
三隅研次監督&市川雷蔵主演による“剣”三部作の第一弾。1962年の作品。
ある剣客の数奇な運命。
とある藩士の息子、高倉信吾。
父の許しを得て三年の武者修行に出、帰ってから藩主の命で水戸の剣客と立ち会い、これを破る。
信吾の剣の腕と藩主の寵愛を鰻登り。
ある理由から隣家の藩士親子から根を持たれ、父と妹を殺される。
父から絶命の寸前、衝撃の出生の秘密を明かされる。
本当の母は、殿の命で妾を討った侍女。殿の慈悲で匿った藩士との間に産まれたのが、信吾。
やがて実母は処刑されるが、その時自ら斬ったのが、実父であった…。
育ての父と血の繋がりの無い妹の仇を取り、藩主の慈悲を受けて信吾は旅に出る。
実父と会う。実父は実母の墓と共に世を捨て独り生きていた。
旅の途中、多くの武士に追われる姉弟と出会う。助太刀しようとするが、弟を逃がす為に犠牲となった姉の姿に心打たれる。
江戸で出会った道場主に剣の腕を見込まれ、幕府お目付け役に仕える。
信吾はお目付け役に亡父を感じ、お目付け役は信吾に亡息子を感じる。
水戸藩取締でお目付け役と水戸に赴くが、そこで…。
…と、文章にしてあらすじを書くとそこそこ長くなるが、尺は何と70分強!
波乱に満ちたある剣客のドラマをよくコンパクトに収めたもんだと感心する。(脚本は新藤兼人)
なので、要所要所のドラマは抑えられているものの、ずっしりとした見応えがあるとは言い難い。ドラマ的な深みや重みには欠ける。
が、数奇な運命に翻弄され続けた非運は充分。
育ての親を亡くし、衝撃の出生を知り、やっと生涯仕える事が出来そうな人物に会えたと思ったら…。
人を斬り続けた邪剣。
運命の果てはすでに決まっていたのかもしれない。
信吾の人生に影響を与えた三人の女たちが、三者三様で印象的。
職人・三隅研次の演出も、時折のワンカットワンカットに鋭い冴えを感じる。
そして、市川雷蔵。
その美形と憂いに満ちた佇まいは非運の剣客にぴったりであった。
☆☆☆☆★ ナイフや剃刀等で指等を切ると感じる痛みは、一瞬にして全...
☆☆☆☆★
ナイフや剃刀等で指等を切ると感じる痛みは、一瞬にして全身を貫く。対してこの作品から感じる痛みは、まるで紙をめくっていたら突如として感じる痛みに近い。始めの内は「ん?」と思うのだが、徐々に感じるあのヒリヒリとする痛みの感覚。
2016年1月12日 国立近代美術館フィルムセンター大ホール
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