「お竜さんに出来ない事でも、お蝶さんなら可能になる」不良姐御伝 猪の鹿お蝶 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
お竜さんに出来ない事でも、お蝶さんなら可能になる
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日本映画史に輝く、緋牡丹博徒のお竜さん。藤純子の一世一代の当たり役。この名シリーズを生んだ鈴木則文監督が作り出した、もう1人のダーティヒーロー。
その名も《猪の鹿お蝶》。
九州の荒くれ男を相手に、凛とした立ち振る舞いをするお竜さんに対して。浅草生まれで、幼い頃に目の前で父親を殺され。女掏摸師としてお天道様の当たらない日陰暮らしで生きて来た、悲しい過去を持つ女。それがお蝶。背中に猪の彫り物を持つ男を探して生きる。
このお蝶が、決定的にお竜と違うところ…。それはズバリ!『緋牡丹博徒』では出来ない、《エロ》《グロ》そしてアクション等に於ける徹底した《ナンセンス》な描写。
この作品でも、いきなりお蝶が風呂に入っている時に、大勢のヤクザに殺されそうになる。お蝶を演じる池玲子の大胆なオールヌードに加え、スローモーションで展開されるアクション。絶妙に編集され、決して前バリが映り込む事は無い(笑)
相手を無常に斬り殺す決めポーズの美しさは、お竜さんの方が美しいが。お竜さんの時には出来ない荒唐無稽なアクションが、お蝶さんの時には可能になる。更に血糊で、池玲子の顔に乳房にと、大量に浴びせる事で、怨念の激しさを表現出来る。
相手を斬り殺し、画面上に赤い色がどばーっと広がり、空から大量の花札が舞い散る。
赤い情念の華が舞うお蝶の世界。
時代背景を考慮した美術セットの美しさも注目です。
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