しあわせ(1974)

劇場公開日:

解説

ガンのために余命いくばくもない娘の短い一生と、彼女を暖かく見守る夫と母の愛情を描く。原作は橋田寿賀子のテレビ・ドラマ「愛といのち」。脚本・監督は「恋の夏」の恩地日出夫、撮影は「狼の紋章」の上田正治がそれぞれ担当。

1974年製作/87分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1974年4月6日

ストーリー

加納直子は、自動車整備工場に勤める南信隆との結婚式を十日後に控えていた。直子の母・綾は、直子が前々から胃痛を訴えて通っている、大学病院の担当医・井村に呼び出された。そして、直子は胃ガンで手術しても治る見込みはない、と告げられた。綾から直子がガンであると知らされた信隆は、たとえ直子が半年の命でも、二人で幸福な家庭をつくろう、と決心するのだった。やがて二人は結婚した。青い海が果てしなく広がる海辺で、直子は信隆に抱かれながら童謡を口ずさむ。楽しい新婚旅行だった。直子の明るい新妻姿も三ヵ月が過ぎた。ある夜、信隆の押し殺した鳴咽かもれていた。目を覚ました直子は、信隆の胸の中に入り、いつになく激しく燃えた。直子の安らかな寝顔から離れた信隆は台所のガス栓を開いた。幸福の絶頂にあるときに一緒の死を選んだのだった。異常な状態に気づいた直子がガスを止めた。直子は自分の命が残り少ないことを知った……。年が明け、直子が成人の日を迎えた日に、医師から妊娠したと言われた。だがそれは、胃の方から来ている吐き気で、直子をいやす言葉にすぎなかった。妊娠したと信じ喜ぶ直子を見て、信隆はただじっと耐え、綾は何枚ものおむつを縫った。最早、直子に体力の限界が来て、家事はもとより、食事も受けつけなくなり入院することになった。直子は、信隆と母に今日までの短い間、女としての幸福を生きられた事を感謝するのだった。直子は最後の望みとして、二人で行ったあの海をもう一度、見たいと言った。信隆は、直子の願いをかなえるために医師の反対を押しきり、彼女を車に乗せ、深夜の国道を走らせた。空も海も赤く染まり始めた海辺に、直子と信隆がいる。海を見つめている今の直子は、死にたくない、と思うのだった。朝日の輝く中で直子の唇から、ほとんど息だけの歌声が……「たき火だ、たき火だ、落葉たき……」。波の音の中に、道子の歌声がかすかに聞える……。

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