「なぜ埋もれてしまったのか」ヴイナス戦記 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
なぜ埋もれてしまったのか
80年代の隠れた名作アニメ映画だ。安彦良和監督は、この作品が振るわなかったことでアニメ制作から長いこと離れることになったわけだが、緻密な作画は素晴らしいし、世界観もユニークだし、アクションも迫力がある。久石譲の音楽も良い。美術監督は小林七郎で相変わらず素晴らしい仕事をしている。なんで埋もれてしまったのだろう。
金星が地球の植民地となり、争いが起きているという設定はガンダムを生んだ安彦さんらしい世界観だ。エネルギッシュで無軌道な若者たちが戦争に巻き込まれてゆき、現実に打ちのめされながらも成長していく。制作当時の日本はバブル経済の只中だったと思うが、なんとなくどん詰まりの享楽感が本作からは感じられ、それはもしかして時代の空気だったのかもしれない。安彦さんの漫画が元だが、金星の自転の方向を間違えたことがショックだったそうで、いろいろと複雑な思いを抱えながら漫画もアニメも制作していたようだ。しかし、一見の価値ある作品なので一度見てみてほしい。
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