「荒野を彷徨う鬼気迫る松田優作のヒースクリフ」嵐が丘(1988) シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
荒野を彷徨う鬼気迫る松田優作のヒースクリフ
エミリー・ブロンテの原作を日本の室町時代に翻案した作品で、松田優作がヒースクリフに当たる鬼丸役を熱演しています。神社の宮司に引き取られた少年と宮司の娘との生死を越えた愛憎のドラマで、原作は読んでいないけど日本の時代劇にすんなりと入ってくる脚色の腕前がいいですね。冒頭、霧深い荒涼とした大地に建っているお社や鳥居のシーンは、黒澤明の『蜘蛛巣城』を彷彿とします。ドラマが始まってからも、能のような登場人物の所作や台詞回しにおいても影響があるように感じました。ファムファタルの絹が死んでから鬼丸が段々と狂気を帯びてきて、暴走する愛情の末に彼女の墓まで暴いてしまう展開はショッキングです。吉田監督は、能の静寂さと鬼丸の狂気からくるエロスとグロの生々しさを対比しながら破滅まで導いていきます。役者では、松田優作の荒々しい魅力もさることながら、田中裕子のクールビューティーの下に隠された表情の怖さが際立っていました。
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