劇場公開日 1992年10月3日

「前衛的で私的な映像詩」ヨーロッパ keitaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0前衛的で私的な映像詩

2012年6月9日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

映画業界きっての前衛監督であるラース・フォン・トリアーの作品を観るには心の準備が必要だ。 何故なら、今まで体験したことの無いような映像がそこに展開されるからである。 今作は彼の作品の中でもより私的感覚に満ちている。 殆どが列車内という閉塞的な場所で展開されるストーリーはトリアー自身の恐怖症の部分と重なってくる。 緻密に計算され組み立てられた映像美とフォン・シドーのナレーションによって私達は催眠術の如くヨーロッパの幻影に誘われる。 しかし、そこにヨーロッパは存在しない。在るのはヨーロッパという媒体に映し出された芸術家トリアーの心であり、ヨーロッパから抜け出すことの出来ない彼の感覚の追体験である。

keita