春のいざなひ

解説

「歌へ今宵を」「恋のナポリ」のジャン・キープラが主演する映画で、「別れの曲」のエルンスト・マリシュカと「最後の戦闘機」のI・フォン・クーベとが脚本を書き「空飛ぶ音楽」のヨーエ・マイが監督に当たり音楽は「桑港」「モスコウの一夜」のワルター・ユルマンとP・カパーのチームが担当、撮影にはオットー・カントレック、ブルーノ・ティムが協力した。助演者はかつて「パンチネロ」に出たイェニー・ユーゴー、「ヴェロニカの花束」のパウル・ヘルビガー、「紅天夢」のパウル・ケンプ、「狂乱のモンテカルロ」のイダ・ヴュスト、ハンス・ユンカーマン、ユリウス・ファルケンシュタイン等である。なお音楽指揮には「おもかげ」のウィリー・シュミット・ゲントナーが任じた。

1933年製作/ドイツ
原題または英題:Ein Lied fur Dich

ストーリー

売出しのテナー、ガッティーはウィーンの国立オペラへ出演する事になった。此処の支配人クレーベルグ男爵は美しいレキシイ嬢を恋している。所が彼女にはテオという恋人がある。しかしテオは貧しいカフェーのピアノ弾きなので、結婚などは思いもよらない。二人は相談の末オペラ座に求職して見ようと劇場を訪れたが、レキシイは大嫌いな男爵の姿を見たのであわてて舞台の方へ逃げた。すると其処ではガッティーの舞台稽古の最中で、まごまごしている内にバレーの踊り子達の中に捲き込まれてしまった。ガッティーは彼女の可愛らしい挙動に好意を抱いたので、レキシイは職を断られたテオの為推薦状を貰ってやろうと彼の招待に応じた。二人は或るカフェーで会った。レキシイはテオを兄と云って推薦状を頼んだが、ガッティーは秘かにテオを其の場に呼び寄せた。カフェーの別室に恋人が他の男と一緒にいるのを見ても、推薦状の手前ペコペコ頭を下げているテオの卑劣な態度にすっかり愛想をつかしたレキシイは、奮然として貰った推薦状を破ってしまった。二人の仲が破れたのを知ってガッティーは喜んだけれど、レキシイは何処に住んでいるのか見当もつかぬ。そこで新聞に「其の夜ガッティーと同席した令嬢が出席すれば場所の如何を問わず慈善音楽会を開く」と広告した。怒ったレキシイは「プールで音楽会を開く」と返事した。当日のプールは裸のお客で満員である。会が半ば進行した時レキシイは大嫌いな男爵を連れてガッティーに婚約者だと紹介した。何日かの後、彼は、失意の胸を抱いてイタリアに帰った。するとイタリアで働いていたテオが現れ、レキシイの結婚は意地でやっているので本当はガッティーを愛していると告げる。喜んだ彼は早速ウィーンへ出発する。今、式を挙げようとしている時、猿廻しの音楽に合わせてガッティーの美声が聞こえて来た。暫くして男爵がレキシイの部屋へ来てみると、新しい花嫁衣裳だけが残っていた。間もなくガッティーとレキシイの二人は美しいイタリアの海上に、ヨットを浮かべて幸福に酔っていた。

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