隊長ブーリバ(1935)
解説
ニコライ・ワシリェヴィチ・ゴーゴリの名作『タラス・ブーリバ』の映画化で、「黒い瞳(1935)」「モンパルナスの夜」のアリ・ボールが主役を勤める。脚色には「モスコウの一夜」の原作者フランス文壇の巨匠ピエール・ブノアが当たり、台詞は「モスコウの一夜」「黒い瞳(1935)」のジャック・ナタンソンがカルロ・リムと協力執筆し、「モスコウの一夜」「人生謳歌」のアレクシス・グラノフスキーが監督に当たり、撮影は「モスコウの一夜」のフランツ・プラナー及びルイ・ネが「家なき児(1935)」のジャン・バシュレと協力している。出演者は「黒い瞳(1935)」「乙女の湖」のジャン・ピエール・オーモン、「吼えろ!ヴォルガ」「不景気さよなら」のダニエル・ダリュー、ロジェ・デュシェーヌ、「第2情報部」「別れの曲」のジャニーヌ・クリスパン、「第2情報部」「外人部隊(1933)」のピエール・ラルケ、コメディー・フランセーズ座付俳優ルドゥー、ポール・アミオ、ナーヌ・ジェルモン等である。
1935年製作/フランス
原題または英題:Tarass Boulba
ストーリー
その昔、コサックは剽悍奔放。定住を嫌って、所在を掠略して移り歩いた。タラス・ブーリバは老いてなお半世の武勲を忘れず、ポーランド人の藁人形の首をはねて睥肉の歎を医して居た。老隊長タラスの悦びは、二人の息子が学業を卒てキエフから帰って来ることであった。長男オスタップは飽く迄父に似て無骨であったが、次男アンドレにはマリーナと名のみしか知らないポーランド人の恋人があった。彼は惜しい袂を分って父の許へ帰ったのだった。息子達を迎えて老いたるタラスの血は再び湧いた。戦争だ。ポーランド人を叩き潰せ、と許り老雄タラスの命令一下、勇敢なコサック隊は、暴政の悪名高い知事ザムニッキイを懲すべく攻め立てる。とは知らぬザムニッキイは令嬢マリーナ姫の誕生の祝宴を擧げていた。怒涛のようなコサックの鯨波。ポーランド人の酔いは醒めた。見れば城は蟻のはい出る隙間もない位に包図されている。今は首都ワルソーから援軍の来るのを待つの外はない。敗戦また敗戦、城内には早や糧食も乏しい。ある日、マリーナ姫は城壁から寄せ手のコサックの中に居るアンドレの姿を認めた。アンドレも彼女が兵糧攻めにされている城にあることを知って戦意を失ってしまう。霧の夜、姫は小間使いをアンドレの天幕へ遣り、城内の模様と自分の切ない気持ちを訴えた。情熱の焔は燃えた。恋に眼くらんだアンドレは、父と兄と仲間を裏切って、食糧を携えて敵の城に入った。そしてマリーナ姫を抱いて、ポーランドの騎士として忠誠を誓った。息子に裏切られたタラスは覚悟を決め猛然と城を攻め立てた。城を支えるものはアンドレの一隊しか無い。姫が出陣を引き止めるのを振り切ってアンドレは前線に立った。そして悲壮にもアンドレは父タラスの面前に若い命を捨てたのである。その時ワルソーからの援軍が到着し、コサック隊は背後を衝かれて一敗地に塗れた。しかもタラスは傷つき、長子オスタップは捕らえられて死刑を宣された。これを聞いたタラスは奇計を以て城内に入り手兵を率いて突嗟の間にオスタップを救い出して逃げたが、自らは致命の傷を受けた。槍を伏せて、コサックの一隊は老将の終焉を葬うべく哀傷の歌を歌い出した。女のような歌を止めろ、死んで行くのはコサック、タラス・ブーリバだ、と老タラスは叫んだ。コサック共は槍をかざし、タラス・ブーリバが好む勇壮な行進曲を合唱し始める。
スタッフ・キャスト
- 監督
- アレクシス・グラノフスキー
- 脚色
- ピエール・ブノア
- 原作
- ニコライ・ワシリェヴィチ・ゴーゴリ
- 台詞
- カルロ・リム
- ジャック・ナタンソン
- 撮影
- フランツ・プラナー
- ルイ・ネ
- ジャン・バシュレ
- セット
- アンドレ・アンドレイエフ
- L. Haguettand
- 助監督
- Marrilly