幸運の天才

解説

この映画は、ロシヤ共和国司法省矯正作業所が如何なるものであるかを示したものである。会場の旗は言っている。「ソヴェト連邦は昨日の犯罪人を勤労者と化せしむる唯一の国家なり」。浮浪人ゴルフに扮するテーニンは、アメリカ映画の三枚目的な役を、多少の泥臭さで演じている。

1934年製作/ソ連
原題または英題:Song of Happiness

ストーリー

ロシヤ共和国の東北部、ヴォルガの上流には東方民族の自治州が連っている。マリー州のコクシャーガ川がチウワシ州境付近お密林帯でヴォルガに注ぐ所に、或る流木場があった。筏作業員のカヴィルリヤはシャルトゥイシという田舎笛の名主で、祖母と二人暮しの娘アヌークと恋仲であったが、支配人レーベデフはアヌークに横恋慕し、ある夜、カヴィルリヤを襲い、二人は争って川に落ちた。レーベデフは溺れ、カヴィルリヤは林中に逃走した。林の中で彼は浮浪人のゴロフと知り、二人は笛と踊りとで、流れ歩く芸人となる。だが、市場で雑踏中にゴロフは見物に来たアヌークの財布を奪う。ゴロフは逃げたが、却ってカヴィルリヤは捕われレニングラードの徴治監に送られる。この徴治監は、昨日の罪人を今日の勤労者に変化させる事を使命としていた。同監の教育部長は彼の天分を認め、音楽学校に入れる。そこの老教授カールは彼にフルートを教えた。カヴィルリヤの手紙をアヌークは受け取ったが、非識字者な彼女には読めない。そこで彼女は学校に入って読み書きを勉強する。五年後、音楽学校の卒業式があったが、その時にはミーシャと変名していたカヴィルリヤには故郷で殺人を犯した手前、帰る所がない。訪ねて来たアヌークにも彼はカヴィルリヤではないと言って彼女を帰した。しかし徴治監の教育部長はゴロフからミーシャが実はカヴィルリヤである事を知り、併せてレーベデフが実は生きていたことをも確かめた。そこで、カヴィルリヤはマリー民族芸術大会の日、晴れの帰郷をしてフルートを奏した。そして今は立派な女性となったアヌークと共に、故郷の文化に尽す事を人々に誓った。

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