巴里の唄

解説

巴里オペラ座付のテノール歌手ジョルジュ・ティルの第一回主演映画で、「氷島の漁夫」以来その作品の輸入を見ないジャック・ド・バロンセリの監督作品である。脚本はかつて「狼の奇蹟」を書いたアンリ・デュピイ・マズュエルがアンドレ・ポール・アントワーヌと協力して書き卸した。主演者ティルを助けて「おしゃれの王様」「泣き笑い千法札」のアルマン・ベルナールが共演するほか、舞台女優ルイザ・ド・モルナン、「姿なき殺人」のシモーヌ・ブールデエ、「母の手」のポーレット・エランベール、「プレジャンの舟唄」のジネット・ゴーベール、ジャック・ヴァレンヌ等が助演している。音楽は「家なき児(1935)」のモーリス・イヴェンが担当、撮影も「家なき児」に参與したバシュレの担任である。オーケストラ指揮はオペラ座指揮者J・E・シーフェルである。

1934年製作/フランス
原題または英題:Chanson de Paris

ストーリー

不景気の為に工場を失業したジョルジュとアルマンは街の唄い手となった。ジョルジュの美声は忽ちキャバレエ「ノエ」の支配人に認められて、専属の唄い手に雇われ相棒のアルマンは給仕に雇われた。ジョルジュにはクララというタイピストの愛人があったが、彼女は物堅い娘でジョルジュが芸人になったことを余り喜んでいない。ところがジョルジュは「ノエ」の客を魅惑してしまった。常設サーカス劇場の「シルク・ド・パリ」の支配人マダム・プレイシュと、シルクの呼びものたる「巴里の唄うたい」という自動人形の番組に出演する女優リアヌ・ダルベルとは、美声で美男のジョルジュの興味を持ち、彼を一夜「シルク・ド・パリ」に招待した。これをリアヌの共演者であり、恋人であるベルマッスが憤慨し、リアヌが取りあわないので一層怒って、出演間際に姿を消してしまった。その時ジョルジュが偶然訪ねてきたので、少なからず狼狽して居たマダム・プレイシュもリアヌも渡りに船と喜び、リアヌの新しい相手役としてジョルジュを契約した。一方、とんだ薮蛇を出したペルマッスは恨みを晴らさんと、ジョルジュの自動人形が出演する間際に、秘かに舞台の袖のカーテンに火を放った。自動人形の中に入っているジョルジュは進退意の如くならず火焔中に倒れるが、駆けつけたアルマンの努力で危いところを救われ、火事も大事に至らずして消しとめた。しかし、この火事騒ぎのためにジョルジュの美しいテノールは無惨なダミ声となってしまった。恐らく永久に歌えるようになりそうにもないくらいである。こうなると、女は薄情なもので、二人の女の態度はガラリと変わった。マダム・プレイシュは態のいい慰め言葉だけで、ジョルジュの契約書を破ってしまった。今までチヤホヤ言っていたリアヌは途端に見限る。ただ変わらないのはクララだった。ところが、実はジョルジュの声は失われてはいなかったのである。火事騒ぎを利用して、アルマンの奇智を拝借してジョルジュは一芝居うったのだった。お陰でジョルジュはリアヌ等の本心を見抜いた。迷夢から醒めたジョルジュがクララの許に帰るとオペラ座からテストの招待状が来ているではないか。かくしてジョルジュは、オペラ座に華々しくデビューした。その放送を聞きながら、マダム・プレイシュとリアヌは口惜しがった。嵐の様な拍手を浴びて退場するジョルジュにはクララが跳びついた。アルマンも喜色満面、親友の出世に大悦びだった。

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