流血の港
解説
「山師ボオトラン」「ラ・トスカ」と同じくミシェル・シモンが主演する映画で「デュラン大佐」「骸骨と首ねじり」等の新進ルネ・シャナが監督したアクツール・エ・テクニシャン・フランセ製作の一九四七年作品。監督シャナ書おろしのストーリーをニーノ・フランクが脚色し、「海の牙」「北ホテル」と同じくアンリ・ジャンソンが台詞を書いた。撮影はサイレント時代に名声高かったニコライ・トポルコフが監督し、音楽はジャン・マルティノンが作曲した。シモンを助けて「悪魔が夜来る」「幻想交響楽」のジュール・ベリー、「ジブラルタルの鮫」のイヴ・ヴァンサン、新人ブランシェット・ブリュノワ、シャナ作品にしばしば出演しているミシェール・マルタン、三枚目のロベール・ダルバン、レイモン・ビュシェール等が出演する。
1947年製作/フランス
原題または英題:La Taverne du Poisson Couronne
ストーリー
貨物船ル・ヴィオラン号の船長パルメーは、船乗りらしく単純で乱暴な男であるが、娘マリアに対する愛情だけは海の様に広く深い。親一人子一人となれば当り前の事には違いないが、それだけに彼は娘の婿フレオーに不安があった。それというのは、パルメーにはすねに傷があったからである。彼の乗船が難破した時、パルメーは責任を果たさず船を捨て、逃亡して名も変えた。その秘密をフレオーが握っており、そのためル・ヴィオラン号もパルメーとフレオーが半分々々の船主である。ル・ヴィオラン号が帰航の途中、運転士モンセイニュールは密航者を発見する。アストルという青年で、恋人のために外国で金もうけを企て、失敗して彼女のもとに帰る途中なのだ。パルメーはアストルの荒っぽい気質が気に入り、息子にでも対する様な愛情さえ感じた。入港して久しぶりにマリアに会ってパルメーはうれしかったが、それはたちまち怒と変った。フレオーが営む酒場王冠魚亭のショウに出る、花形歌手シルヴィア・コライユを、フレオーが妾にしていたからである。縁は異なもので、シルヴィアこそアストルが会いたさに帰って来た恋人で待女はアストルに突然帰って来られて狼狽したが、フレオーはそのため却って彼女と切れたくない。蓄財の術を知らぬパルメーは、ル・ヴィオラン号の権利を抵当としてフレオーから金を借りていたため、船はフレオーの所有に帰して了うアストルとフレオーの板ばさみとなったシルヴィアは、わたしではいやだと言出したので、フレオーはマリアに出て行けと無理を言出す。パルメーは怒ったが、フレオーは警戒して用心棒を数名集めているので手が出せない。その上フレオーはアストルを葬ろうと手はずを決めるがパルメーもさる者、船員大勢で王冠魚亭に出かける。その結果、大乱闘の最中フレオーは短刀で刺されて最後をとげ、けん疑はその短刀を振りまわしていたアストルにかかる。パルメーはアストルを逃がすと、無実の彼はシルヴィアのアパートに逃込む。フレオーの死で全財産はマリアの所有となると彼女は夫の死んだ翌晩の店を聞き、父には引退しろといってル・ヴィオラン号を他に売渡す。娘のしょう変にあきれたパルメーは、法網をのがれてもフレオーを殺した罪は消えない事を悟り、其夜ひそかにル・ヴィランを船出させ、夜明けごろ船員一同を退船させて、燃え上がるル・ヴィオラン号と運命を共にした。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ルネ・シャナ
- 脚本
- ルネ・シャナ
- 脚色
- ニーノ・フランク
- 台詞
- アンリ・ジャンソン
- 製作
- アクツール・エ・テクニシャン・フランセ
- 撮影
- ニコライ・トポルコフ
- セット
- Pierre Marquet
- 作曲
- ジャン・マルティノン