モロッコの血煙

解説

往時のサイレント時代に米国に於いて名監督の一人であったレックス・イングラムが監督主演した最初のトーキー作品である。台本は「モロッコ」の作者ベンノ・ヴィニーと協力してイングラム自ら書卸した。なお監督助手にはイングラム夫人たるアリス・テリーが任じた。撮影は「掻払いの一夜」のビュレルとポルティエが共同している。助演俳優は「巌窟王(1928)」に出演した故ピエール・バチェフ、新進のロジタ・ガルシア及びアナベラ・フィールズの二女優、往時から知られている性格俳優アンドルース・エンゲルマン、フェリーペ・モンテス、デニス・ホーイ等の顔触れである。

1932年製作/イギリス
原題または英題:Love in Morocco

ストーリー

ハメッドは父親のアラールが原住民ながらもフランスの官吏を勤めているところから、幼少の時からフランス風に養育されて、フランスのアフリカ常備軍の下士官として勤務している。同じ隊の下士でハメッドとは飲み友達の親友アンドレ・デュヴァルはいつかハメッドの美しい妹ヂナアと恋仲になっていた。フランス人とモロッコ女、キリスト教徒と回教徒、と人種も宗教も異るのにデュヴァルとヂナアの恋は沙漠に照りつける陽光よりも熱烈であった。しかしデュヴァルはヂナアがハメッドの妹であり、アラールの娘である事は知らなかった。ハメッドはデュヴァルの恋女が我が妹と知って驚いた。多くのフランス兵士が原住民の娘に対して如何に無情だかを彼は知り過ぎていたからだ。彼は若しもデュヴァルが妹に対して真の愛でなく、一時の戯れ心からであったら親友と雖も生かしては置かぬと自ら誓った。ハメッドはベルベル人の酋長としての面目を保たねばならなかったのだ。ところがヂナアに求婚者が現れた。それは沙漠の漂盗団の首領アマロックで、彼はヂナアを嫁に呉れれば、アラールに迷惑は懸けないというのだ。そういって来ながらアマロックは途端に叛いたので戦端は開かれた。激戦中ヂナアは愛するデュヴァルの身をかばって敵弾を受けた。アマロックは敗北し戦いは遂にフランス軍の勝利となり、デュヴァルは本據へと凱旋の途に就いた。ヂナアは再会を約して傷の手当を受けるのだった。

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