劇場公開日 2022年4月22日

「金字塔てやつ」男たちの挽歌 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0金字塔てやつ

2021年8月23日
PCから投稿

チョウユンファってひとはパッと見、あきれるほどウソくさい。映画の序盤はホーとマークの絶頂期だが「オフコース」とか言っちゃうマークの軽さ。上機嫌がフラグとはいえ軽薄すぎる。

が、出所後堅気なタクシー運転手として頑張っているホーがぐうぜんマークを見つける。そこから邂逅にいたる地下駐車場のシーンを涙なくして見ることはできない。あんなに意気揚々だったマークが粗末な身なりをして補装具をつけびっこをひいている。肩にしたウエスで迎車のフロントガラスを拭くとシンが飯代だと言って無造作に札を放る。札をひろい駐車場の隅で得体のしれないべんとうを食べる。そこにあらわれたホー。茫然として口から食い物がこぼれる。ここで何しているんだと案ずるホーに「3年待ったんだぞ3年!」と声を張り上げる。マークはそんな姿になってまで、シンの下僕になってまで、ふたたびホーと挽回する野望を失っちゃいなかった。──のだった。

おそらく涙なくして見ることはできない──にご賛同いただける白眉だと思うが、その一方でジョンウーは娯楽映画について考えさせた。
個人的にマフィア・ギャング・ノワール系映画を好んで見たいと思うことはない。深作に傾向する──など、暴力的な映画に男っぽさを感じるのは、タバコを吸うことや、酒が飲めることがかっこいい──と同等の稚気だと思う。(ことがある。)

もちろん映画を誰がどう見ようと勝手だが、映画が魂を持っている──そう捉えることが日本映画のつくり手にはある。日本の観衆にも多少ある。(と思う。)
本作の面白さはジョンウーが多数の共感を集められる絵づくりをした──ってだけのこと。テクニックの話。たんじゅんに心躍らせた初見から、次第にそんなことも教えてくれた映画だと思っている。

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津次郎