劇場公開日 2022年4月22日

「日活アクションよりも、自分には東映の1965年の現代ヤクザ映画「顔役」の内容がお手本になっているように思いました」男たちの挽歌 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日活アクションよりも、自分には東映の1965年の現代ヤクザ映画「顔役」の内容がお手本になっているように思いました

2021年2月15日
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鑑賞方法:DVD/BD

素晴らしい!文句無しの傑作です
従来の香港映画のイメージを一新する香港ノアールの誕生の金字塔です
まるで日本映画を観ているかのように全く違和感を感じません
街並み、服装、ヘアスタイル、化粧
香港ぽさは極めて薄く無国籍です
話している言葉が広東語で、テロップも漢字であるのに全く違和感がなく日本映画のようにスルスルと没入してしまうのです

本作のイメージであるロングコート
考えてみれば香港じゃそんなもの着ないものです
だって真冬の2月でも最高気温は20度もあるのですから
暖かい日なら25度は行きますから、半袖でもいいくらいです
そういう香港ではないイメージを監督は意図して目指したと言うことです
東京をイメージして香港の立地を逆手に取り、かっての日本映画以上の無国籍映画を作り上げたのです

日活アクションよりも、自分には東映の1965年の現代ヤクザ映画「顔役」の内容がお手本になっているように思いました
日本のギャング映画は任侠もの、実録ものを指向していき、この路線は一旦途絶えてしまいます
復活したのは1986年10月からの「あぶない刑事」以降ではないでしょうか?

本作はその同じ1986年8月の香港公開
翌1987年4月の日本公開です
20年の歳月を越えて「顔役」が遺した種子が香港と日本でほぼ同時に芽吹いたのです

北野武監督作品のノワール映画も、Vシネマも本作から強い影響を受けたのは明らかです

ガンアクションは全くの独創性のあるものです
ハリウッドにも日本映画にもヨーロッパのノワールものにも無いもので素晴らしいものでした

ストーリー、キャラクター造形は日本のアクション映画や60年代の現代ギャング映画の様々なエッセンスの一番良い部分をセンス良く消化しています

恋人ジャッキーや子供達の合唱団シーン、タクシー会社の社長や同僚たち
どれも見事な設定です

主演のティ・ロンは渡瀬恒彦に本当に良く似ています

国際都市香港は東京以上の無国籍さです
しかしカンフー映画の伝統も微かに漂うのも素晴らしいところ

最高です!

しかしこの香港も将来どうなってしまうのか?
国際都市香港の無国籍さは消え去ってしまうのかも知れません

あき240
talismanさんのコメント
2021年2月28日

香港って暖かいんですね、知りませんでした。ロングコート含めて、香港らしさを極限まで薄めてるのかー!なるほど!ありがとうございます!

talisman