マッチ売りの少女(1928)

解説

有名なアンデルセンのお伽噺を映画化したもので、「女優ナナ(1926)」と同じくジャン・ルノワール氏が監督し、カトリーヌ・エスラン嬢が主演した。助演者はジャン・ストルム氏、マニュエル・ラービー氏、アミー・ウェルス嬢、トルストイ伯爵夫人、撮影者はジャン・バシュレ氏である。ヴィユ・コロンビエ座のアトリエで製作されたアヴァンガルド映画でソファール社が発売した。(無声)

1928年製作/フランス
原題または英題:The Little Match Seller La Petite Marchande d'Allumettes

ストーリー

大晦日の夜のこと、遠い遠い北国の或る町でのことでした。町中は道も屋根もまっ白に雪が積っていました。此の町の町はずれの貧乏窟に住んでいる小さいマッチ売りのカレンは獣の様に残忍強慾な親類の小父さん、小母さんにいじめられていました。彼女はマッチを入れた小さい篭を抱えて、雪に埋れた道を穴だらけのスリッパを穿いただけで寒さに慄えながら歩きました。しかし誰もマッチを買ってくれる者はありませんでした。家に閉じ篭っているのが退屈になって外出しようとした或る青年紳士は門際に出て来てからマッチを持っていないのに気付いてカレンを呼びましたが運悪く彼女には聞えないで彼女はそのまま通り過ぎました。彼女は或るカフェの明るい窓辺に吸い寄せられるように近づきました。かの青年紳士も其所の客となっていました。カレンは硝子窓の氷を爪で掻き落して中をのぞくとおいしそうなお菓子が犬に与えられるところでした。犬は砥めたばかりで食べようともしないで覗いているカレンに吠えつきました。逃出すあとから追い掛けて来て其の菓子はカレンに与えられたので、夢かと悦んだ彼女は食べようとしました。其時かの青年紳士が出て来て犬の砥めた菓子だからと云って取上げ棄てて了いました。そして代りに施しをしようとしたが其処へお巡りさんが来たので駄目になりました。カレンはお巡りさんに叱られるのかと思って逃げるとお巡りさんは追っかけて来て、彼女と一緒に面白い覗き眼鏡を見物しました。雪がひどく降り出したのでお巡りさんは早くお家へお帰りとすすめて行ってしまいました。だけどマッチを少しも売っていないカレンは帰れば叱れるので帰るわけにもゆかず、かの青年紳士の家の傍まで来ると動けなくなって坐りました。そして寒いのでマッチを点けました。暖かでしたがマッチは消えました。またマッチを点けると彼女の前にはストーブが見え、御馳走が見え、クリスマス・ツリーも見えました。それから玩具の兵隊が動き出し、士官が彼女を馬に乗せてくれました。するとその後から死神が馬で追駈けて来て彼女を奪い取り薄暗い国に連れて行きました。カレンの身体には薔薇の花が被さりました。翌朝かの青年紳士は小さなカレンが雪に埋れて死んでいるのを見て可愛想な少女だなと言いました。

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映画レビュー

0.5流石♥フランス映画!

2024年5月9日
スマートフォンから投稿
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マサシ

3.5【雪降る中、少女が見たファンタジックな幻のシーンの幽玄無譚なる美しさは、芸術的であると思った作品。】

2024年5月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 世界的巨匠ジャン・ルノワール監督のアンデルセン童話を題材にしたサイレント映画だそうである。-

◆感想

・ストーリーはアンデルセン童話の「マッチ売りの少女」少女だが、彼女が凍てつく中観た幻の彼女を支える騎士と悪魔の幽玄的なシーンの美しさ及び躍動感は、比類がない。

<ラストは原作通りに哀しいが、作品の全体構成がモノクロ・サイレントに見事に嵌っている作品であると思う。>

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NOBU

4.0カトリーヌ・へスリング

2024年3月18日
Androidアプリから投稿

ルノワール監督のアンデルセン原作の仏映画(1928)

凍てつく冬の夜
マッチ売りの少女の命の炎が消える前に
彼女が見た現実と夢を描く

少女を監督の嫁である
カトリーヌ・へスリングが演じていて
やっぱり時々、大人に見えたりもするが(何となく色っぽい)
細身で小柄だし、儚い感じもでていた
「女優ナナ」(1926)での場末の女感、あばずれ感との違いには仰天

監督の父親のオーギュスト・ルノワールの晩年の
モデルをやっていた人でもあった

夢の中の玩具屋の出来事からの映像が見せ場
独創性が感じられる

現実ではマッチを売り損なうし
夢の中でも食べ物にありつけないし
王子様(将校)も彼女を助けられない

運が尽きて、ひとつひとつ梯子を外されてゆくように
悲しい結末に向かう感じがよくでていた
儚い感じがいいな

後から音楽をつけたものを観たらしいのだが
監督は否定していたらしい
私は違和感を感じなかったが、駄目かな

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jarinkochie

3.5他の映画とはまた違うおもしろさ

2024年3月14日
Androidアプリから投稿

この監督さんの映画は少しは見たが、ここならではのおもしろい表現が見られ、おっ、と思った。
ストーリーは相変わらずの悲しい内容。しかもここでは独特に表現されているので結構印象に残る。

少女を演じた女優さんが大人で、当時28歳? きれいな人で動きは上手と思ったが、マッチ売るより体を売ってしまいそう…などとつい思ってしまう。ちょっと複雑な気持ちにさせる『少女』。大人が楽しむための映画だと思えば割り切れるけれど。

雪の中から徐々に死へ移行していく過程が神秘的だった。おもちゃの世界は少女には楽しい世界。動きがおもしろい。でも少し気持ち悪い。生き物の温もりがない気持ち悪さ。死に近い孤独な世界。超イケメンの軍人さんがおもちゃを動かしてくれる。生きるエネルギーの最後の一滴のように思える。
死は決定的。抵抗を許さず、待たない。それが絶妙に表現される。死神が駆け抜ける映像が一番印象に残った。質感のようなものがすごかった。

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あま・おと