歓楽の園
解説
恋に狂う男女の最後、盲目的な恋の末路が描かれる。リアナ役のピナ・メニケリ以外、配役・スタッフとも不明。無声、染色。
1918年製作/イタリア
原題または英題:The Garden of Voluptuousness
ストーリー
伯爵の遺児リアナと妹のメリタは此の牢獄の様な厚い壁の中に、貪欲の外何物も知らない叔母のマリヴィアと恐しい悪者ロレニツオ・セゲリの監視の下に暮していた。或春の一日、リアナの目に映った影があった。其れは二年余りも旅に出て消息のなかった弟と、その傍らにいる若い紳士の姿であった。其の紳士は誰知らぬ者もない程有名な詩人ギウリアノ・モーリスであった。此の熱情的の詩人と美しい娘との間には直に恋の花が咲いた。二人は結婚した。享楽に耽る二人は胡蝶の如く歓楽から歓楽に遊び戯れる日が続いたモーリスも妻の歓びを見て嬉しく思った。然し次第に放縦な生活になれたモーリスは遂に筆取る勇気もなくなった。斯くして負債は山の如く債鬼は日に日に彼の門を叩くのであった。此の時ロンドンに於て開催される万国名画大会にイタリアから出陳する大画伯マリオ・アッソロの傑作”歓楽の園”に対して賞讃の辞を物すべく文部大臣から委託された。彼は此の不朽の傑作品に対して自分の芸術的良心は忽ち火の様に燃えた。そして酒にも女にも心を傾けずひたすら一代の名作を残そうと悶え苦しみつゝ、其の画に対した。然し債鬼の一人は彼の哀訴を耳にかけず此の名画を抵当物として運び去った。妻のリアナは今妻として目覚めたのである。彼女は夫のため金を得んとしてあらゆる苦痛、人の堪えしのぶ事の出来ぬ恥をも冒して漸くの事金を得て家に帰った時は既に夫は覚悟の自殺を遂げていた。驚きの余りリアナは自分の理性を失った。憐れなリアナは発狂した。夜半の風は此の不幸な佳人の頬をそよそよとなでるのみであった。