マッターホン
解説
1865年マッターホン登攀に際して起こった劇的な実話に依拠して作られたアルプス高峯を背景とした物語で、「聖山」「銀界征服」の作者アーノルド・ファンク氏の原案に基づきヌンチオ・マラソンマ氏がシナリオを執筆し、併せてマラソンマ氏自身がかつて「誘惑の罠」「赤と黒」等に監督主演したマリオ・ボンナルド氏と共に監督の任に当たり完成した映画である。「聖山」出演のルイス・トレンカー氏、ハンネス・シュナイダー氏、エルンスト・ペーターセン氏、及び、古くは「不滅」によって知られているマルチェラ・アルバニ嬢や、欧州で売出しのクリフォード・マクラグレン氏、それからペーター・フォス氏、等の人々が出演している。(無声)
1928年製作/82分/ドイツ
原題または英題:The Conquest of the Matterhorn Der Kampf ums Matterhorn
ストーリー
霊界高く、雪と氷とに閉ざされた神秘の国、その頂に聳え立つアルプスの盟主マッターホンの雄姿は古来幾世紀の間、下界に住む人々の敬崇の祠であり、精神的な鼓舞の源であり、しかしてまた全世界登山家の憧憬の的でもあった。世界的に山案内者としてその名の高いアントン・カレールもまたこの頂征服の喜びを夢見る男であった。彼は美しく優しい妻フェリシタスと共にこの処女峰征服の第一人者である事を信じて疑わなかった。が、彼は腹違いの弟ジアコモがフェリシタスに横恋慕しているとは知らなかった。その内にこの地へ若く果敢なイギリスの登山家エドワード・ホイムパーがマッターホン登攀の挙をアントンと共にしに来たが、アントンが何故かこれに承諾を与えなかったので、ホイムパーは他の山案内者と共に単独この登攀を決行した。しかしこの計画は失敗に帰し、一行は谷に滑り落ちて負傷した。傷ついたホイムパーはアントンの家に運ばれ、フェリシタスの手厚い介抱を受けた。この機を逸せずジアコモがフェリシタスとホイムパーとの間に不純なものがあるとしてアントンをそそのかしたので、単純なアントンは怒りに駆られ、突如ホイムパーに登攀する承諾を与えた。登山の途、アントンはホイムパーを断崖から突き落として恨みをはらそうとしたが、心がとがめてホイムパーを助けた。山の悲劇を伝え聞いたフェリシタスはとるものも取りあえずに夫とホイムパーとの跡を追って危険を未然に防ごうとした。フェリシタスは転落した。アントンは妻を救い、自分の単純な嫉妬から引き起こしたこの事件を悔いた。二人の心は美しく澄んで晴れた。それから幾年かは過ぎた。ホイムパーは処女峰征服の希望を捨てる事が出来ず、再び友人達と共にやって来た。アントンも彼に遅れまいとイタリア人の仲間と共にこの栄冠を争う事になった。この決死の競争はついにイギリス人の勝利に終わった。マッターホンの絶嶺には有史以来最初にイギリス国旗が翻った。しかし、山の神秘は傷しい復讐を行うのである。下山の途、ホイムパーの三人の友と一人の案内者とは一條の綱によって、懸崖にぶらさがった。ホイムパー一人の力がどうしてこれを支える事が出来よう。綱は切れた。悲劇は来た。が、ホイムパーは奇跡的にその一命を取止める事が出来た。そしてホイムパーが人々から友を見捨てたとして誹られた時に、アントンは自ら進んで友の為にその潔白を証したのであった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- マリオ・ボンナルド
- ヌンツィオ・マラソンマ
- 脚本
- ヌンツィオ・マラソンマ
- 原案
- アーノルド・ファンク
- 撮影
- ウィリー・ヴィンテルシュタイン
- ゼップ・アルガイヤー
- セット
- ハインリヒ・リヒター
- ロケーション・マネージャー
- ルイズ・トレンカー
- ヴィクター・スクテッキー
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Anton Carrelルイズ・トレンカー
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Felicitas his wifeマルチェラ・アルバニ
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Giacomo Anton's step-brotherクリフォード・マクラグレン
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Carrel's motherAlexandra Schmidt
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Edward Whymperペーター・フォス
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Meynet the hunch-backポール・グレーツ
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His wifeJohanna Ewald
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Croz a mountain-guideハンネス・シュナイダー
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Seiler a hotel proprieterハインリヒ・グレトラー
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Hadowエルンスト・ペーターセン
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HudsonHugo Lehner
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Sir DouglasLuggi