妖花アラウネ(1927)

解説

「プラーグの大学生」と同じくハンス・ハインツ・エーヴェルス氏作の怪奇小説に取材し、同映画と同じくヘンリック・ガレーン氏が監督完成した映画である。主役を演ずるのは「メトロポリス」「懐かしの巴里」出演のブリギッテ・ヘルム嬢と「獣人」「魔術師」のパウル・ヴェゲナー氏との二人であるが、なお「ケエニクスマルク」「魔術師」のイワン・ペトロヴィッチ氏も出演している。(無声)

1927年製作/ドイツ
原題または英題:Alraune

ストーリー

医学と科学とに造詣深きテン・ブリンケン博士には、人工的受胎から一つの生命を創造しようという望みがあった。博士は科学的な事実以外には何物をも認めず、人間同志の愛に対しても嘲笑的な考えを抱いていた。博士は自分が所説を実現してみたい熱望からある時、死刑を執行されて間もない囚人と、夜の街に春をひさぐ女とを研究の対象物に用いて実験を試みた。この男女は共に実験の犠牲となって哀れ命を失ったが、博士の実験はみごとに成功して、此処に一つの生命が創り出された。生まれた子供は女であった。そしてアラウネという名が付けられた。博士は彼女の成長過程を研究する為に冷静な科学的精密さを以てその生立ちを日記に書き記して行った。その上、博士は環境と遺伝との影響する所を調べる為にアラウネを修道院に入れた。が、この修道院の生活にあって彼女は反対に日毎に粗暴と残忍との性質を加えて行き、遂にはゲントラムという男をそそのかし親の金を拐帯させて駆落ちをした。その途中、彼女は列車中で知り合いになった魔術師の甘言に誘われ曲馬団に入る。アラウネの艶なる姿態はあらゆる男性を惹きつけ彼等を破滅の路に導いた。一方、アラウネの逃亡を知ったテン・ブリンケン博士はその行方を探した末、曲馬団に加わった事を突き止め、その地に行って彼女を連れ戻して来る。この時、彼女と別れるに忍びず堪え難い悩みからゲントラムは自分の生命を断った。アラウネはなお多くの男性を惹きつけ、遂には博士自身さえその魅惑の虜とするに至った。博士はそして彼女の周囲に群り来る男性を遠ざける事に苦心する。その内にアラウネはある日ふと盗み見た博士の日誌より彼女自身の素性を知った。それと共に博士が彼女及び両親に加えた過去の忍び難い侮辱は彼女の胸に憤怒の炎を燃えさせた。で、彼女は博士を恋の陥穽に引き入れて徐々に破滅させようと決心した。アラウネの魅惑的な肉の香に魂を奪われた博士は貴重なるべき研究をも放擲し総てを打ち忘れて彼女を自分の身辺から去らせぬ事のみに心を挫いた。斯くてアラウネの復讐は着々として最期の目的に近づいて行った。恋を忘れようとしてする賭事もアラウネが手近に見えなければ勝運に恵まれなかった。こうしている内に、アラウネにまた新しい恋人が出来た。それは博士の愛甥フランク・ブラウンであった。眼のあたり甥の腕に抱かれ行くアラウネの美しき姿を見た博士は失望の極、その場に悶絶して果てたのである。

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