「現代につながる本格的なSF映画は本作が実質的に史上初 ブレード・ランナーは、本作から強い影響を受けていることがひしひしとわかります」メトロポリス(1926) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
現代につながる本格的なSF映画は本作が実質的に史上初 ブレード・ランナーは、本作から強い影響を受けていることがひしひしとわかります
1927年公開、ドイツの白黒の無声映画です
昭和2年の映画と思えばどれだけ物凄い作品だか理解できるはず
世界初の本格的SF映画にして金字塔です
最早オーパーツのように感じるような、そんな大昔にあり得ないレベルの近代的な作品です
改めて観ても何ら古臭さは皆無なのです
SF映画の始祖は、1902年のジョルジュ・メリエスの「月世界旅行」が間違いないところ
その次は、1910年のJ・サール・ドーリー監督の「フランケンシュタイン」
1920年のロベルト・ヴィーネ監督の「カリガリ博士」
1925年のハリー・O・ホイト監督の「ロスト・ワールド」
そして1927年の本作「メトロポリス」となります
現代につながる本格的なSF映画は本作が実質的に史上初だと思います
SF的な未来世界の設定、美術やセットのレベルは驚嘆すべきほど
金属の肌のロボットはスター・ウォーズのC3POの元ネタというのは超有名
というか、それがすぐにわかるようにしているのですからリスペクトです
その他にも地下都市の光景は、タイムトンネルの地下施設やスター・ウォーズのデススター内部シャフトの元ネタだったのだとわかります
また地上の円筒形の超高層ビルは、ブレード・ランナーでのLA市警のある高層ビルの形状の元ネタです
スピナーが上空からそのビルの特徴ある円形の屋上に回り込みながら降着しようとするシーンは、このビルの形状はメトロポリスが元ネタだぞ、分かる奴はいるのか?という問いかけであったのです
また、その向こうにある超巨大ビルはタイレルコーポレーションの本社ビルの元ネタであったことに今更ながら気づきました
美術だけでなく設定やストーリー自体もブレード・ランナーは、本作から強い影響を受けていることがひしひしとわかります
地下都市は、2019年のカオス化したLA の元ネタだったのです
当時のことですから合成などの特撮技術は当然未発達です
それなのに現代のSF映画でもこれほどの効果を見せるものは無いほどの効果を上げているのです
チープさは皆無、圧倒されるとはことことです
シーンの見せ方、俳優の演技指導、演出の力、それこそが特撮の本質だと教えてくれます
水没しつつある地下都市の大スペクタクル!
群集シーンの見事なこと!
大群衆による一斉蜂起のシーンは未来少年コナンの最終回の元ネタでしょう
マリアの火炙りから、大聖堂の大屋根に至るクライマックスの手に汗握る活劇の展開は無声映画とは思えないほどの躍動感があります
舞台劇のような、ミュージカルのような演出が取り入れられています
美術やセットだけでなく、すべてが極めてスタイリッシュなのです
本作の後、SF映画の系譜は、1931年版の「フランケンシュタイン」、1933年のキングコング、同年の「透明人間」と続いて現代とつながっていくのです
1936年のチャプリンのモダンタイムスはSF映画とは言えませんが文明批評としては本作から大きな影響を受けていることは明確です
エイゼンシュテイン監督の「戦艦ポチョムキン」は1925年の公開
本作はそこからの影響があると思いますが、かといって共産革命を扇動するものではありません
「手と頭脳は互いにおもいやりを持つことで理解し合えるのだ」
このメッセージで本作は締めくくられるのですから
蛇足
ロボットのマリアを作る発明家ロトワングは、マッドサイエンティストそのもの
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のドクの元ネタと思います
ロトワングの家の玄関ドアには、五芒星がついているのは際どいです
しかもロボットマリアの起動シーンにはその頭上に巨大な六芒星の一部と思われる図案が見えるのです
彼の鼻は少し鷲鼻ぽいのです
ナチがユダヤ人排斥を始めるのは1935年から
本作の8年後のことになるのです
但しフリッツ・ラング監督自身はユダヤ人で、1934年にはドイツから亡命してフランスを経由してアメリカに渡っています
『世界から猫が消えたなら』を観たとき、限りなくこの『メトロポリス』をリスペクトしていましたけど、猫がいなくなってそれほど世界は変わらないけど、映画が消えたらかなり変わりそうと感じました。
この映画が後世に与えた影響は大きすぎますね~