「これが1926年に作られた映画?」メトロポリス(1926) kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
これが1926年に作られた映画?
科学の飛躍的な発展により、地下に労働者が押しやられている一方、資本家たちは地上でぬくぬくと享楽的生活を送っていた。メトロポリスの支配者フレーダーセンの息子フレーダーも楽園で楽しんでいたところ、労働者の娘マリアが現れ、労働者の子どもたちにこれが兄弟よ、などと教えていた。慌てて彼女たちを地下においやったが、フレーダーは一目惚れ。名も知らぬ女性を捜し出したのだ。彼は地下へ下り、爆発事故を目撃。労働者の過酷な仕事を知り、バベルの塔に住む父親フレーダーセンに報告する。真っ先に彼が報告してしまったため執事はクビになるが、責任を感じたフレーダーは自分の元へ来るように伝える。再び地下の作業場へと降り立った彼は時計の針を点灯するところに合わせるという作業をした労働者と入れ替わる。そこで得た情報によってマリアの集会場へと向かうのだ。マリアはバベルの塔の伝説を聞かせ、「頭脳が手と結ばれるには心を持った仲介者が必要」と説き、フレーダーと再会。熱くキスを交わすのだった・・・それを見たフレーダーセンは、亡き妻の人造人間を作っていた天才科学者のロートヴァングにその姿をマリアに似せろと命令する。
地上では妖艶な踊りをする人造人間マリアは男どもを迷わせ、あちこちで奪い合いの決闘が起こり、地下では労働者に暴動を扇動するように仕向けていた。フレーダーセンは合法的にこれを制圧するつもりだったのだ。しかし、そう単純には事が運ばず、かつての恋敵であったロートヴァングは自分の命令しか聞かないようロボットを作り上げていたのだ。暴動が起こり、労働者たちは地上へ出て破壊行動をする・・・しかし、エネルギーセンターの心臓部まで壊してしまったため、地下は水没することになり、彼らが残してきた子供たちに水の魔の手が・・・
フレーダーはクビになった執事とともに地下から子どもを助けようとする。そこにはすでに本物のマリアが駆けつけていた。地上では暴徒と歓楽街“ヨシワラ”で踊っていた人造人間マリアが衝突し、悪魔だと決めつけた暴徒によって火あぶりにされる。そして、マリアはロートヴァングに追われ、フレーダーが彼女を助け、労働者代表と社長が握手して終わる。
これが1926年に作られた映画?と圧倒する映像力に驚くばかり。無声映画でしかも4分の1が消失している作品であるのに、現代の技術と比しても遜色ない仕上がり。カットバックなどの編集もさることながら、電気仕掛けの映像はフィルムに傷つけただけで描けるものじゃない。さらに大道具も金がかかってることが窺えるし、大人数のエキストラも圧巻。特に『タイタニック』のような水没シーンでは子どもばかりですぜ!また、主演女優のブリギッテ・ヘルムの二役も絶妙だし、ストリッパー顔負けの踊りもエロくていい。
残念なのがストーリー。資本家と労働者の対立がもっと過激になるとか重要人物が死ぬとかあればいいのに、社会派要素が後半になるにつれて薄れてゆく。しかも仲介者によって和解するなんてのは簡単に解決しすぎだろ!