ヴェニスの謝肉祭
解説
「過去よりの呼声」「さらば青春」「紅百合白百合」等に出演したマリア・ヤコビニ嬢の主演する映画である。原作は「汚水より星へ」の作者P・A・マッツォロッティ氏が書き卸したもので、ミケーレ・リンスキー氏が脚色し、「恋に生きる女」「紅を踏む者」と同じくマリオ・アルミランテ氏が監督したものである。ヤコビニ嬢の相手役は「面影」出演のマルコム・トッド氏で、そのほかジョジアーヌ嬢、ボナベンチュラ・イバニェス氏、等が出演している。(無声)
1927年製作/イタリア
原題または英題:Il Carnevale di Venezia
ストーリー
謝肉祭の夜はイタリア水の都ヴェニスは歓楽と魅惑との頂上にあった。ゴンドラと、甘楽と、煙火と、若き男と女と。が、その喜びをよそにして憂いに沈む二人の者があった。ヴェニスの町の総督の後裔として家系正しいモロシン侯爵は打続く不運に、債権者の為にその豪奢なる宮殿も、その数々の家財宝物をも競売に附される事になっていた。時に、この都に暫しの漫遊の足を止めているアメリカの馬鈴薯王で二千万長者の青年エドワード・ジェファースンという人があった。が、浮世の苦しみを知らぬ富豪の常か、彼は常に退屈で気紛れであった。そして彼には、このカーニヴァルの祭も何等の興をそそらなかった。そして彼は例の一時の気紛れからモロシン侯爵の競売に臨み、その宮殿家財の総てを一人で買って、侯爵には依然住居する事を許した。かくて老侯爵の苦境と名誉とは救われた。その当日、物陰から密かにこの様子を覗って感謝の涙に咽んでいる一人の気高い美しい婦人がいた。その後のある夜、エドワードは秘書にすすめられて遊覧地として名高いエール・ベーンの市に遊び、男の誘惑にあって路傍に泣く覆面の婦人を見てそれを救ったが、彼女は身分を秘して物質上の援助を辞して立去った。この婦人の美しさと不思議な態度とは深くエドワードの心を捕えた。その後、彼はその夜の彼の親切を感謝しつつゼノアに立去る旨を記した未知の女と署名した手紙を受取った。彼は秘書を派してその捜索に赴かしめたが、その留守中エドワードは社交界の花形ジェルメーヌの紹介によってガブリエルラという婦人を代りに秘書として雇い入れた。ガブリエルラの気高さと美しさとは漸くエドワードに強い恋心を起さしめる様になった。その内に年中行事の一つである公爵邸の大仮装会の日が来た。その席上にて、この夜の祭りに女王として選ばれたのはガブリエルラであつた。これがかつてエドワードと夜めぐり合った覆面の婦人であり、又、侯爵の孫娘である事も、その時に判った。従僕の口からガブリエルラは老侯爵と両親との不和から長い間別居して幼い弟を養育していた事も知れた。エドワードとガブリエルラとはこの夜結ばれた。祭りのヴェニスの夜、ゴンドラと歌と煙火と。
スタッフ・キャスト
- 監督
- マリオ・アルミランテ
- 脚色
- ミケーレ・リンスキー
- 原作
- P・A・マッツォロッティ
- 撮影
- ウバルド・アラタ
- マッシモ・テルツァーノ