ガアズマン

解説

ハンガリーの名劇作家フェレンク・モルナールの戯曲『近衛兵』の映画化で、「芸術と手術」「罪と罰(1923)」「カリガリ博士」等と同じくロベルト・ヴィーネ氏が監督したもの。脚色したのはルドウィッヒ・ネルツ氏である。主役は「焔の裡の女」「ファントム」等出演のアルフレッド・アベル氏と、「イスラエルの月」「トロイ情史」等出演のマリア・コルダ嬢との二人で、アントン・エトホーファー氏がそれを助けて重要な役を演じている。無声。

1926年製作/オーストリア
原題または英題:The Guardsman

ストーリー

ハンガリーのお話。男は天才的な有名な男優、女は愛嬌があってあだっぽい女優、二人は結婚生活をここに六ヶ月送って来た。その間、多少の意見の相違はあったが、とにかく円満に暮して来た。が、ある日、妻が近衛兵というものを好いている事に気が付いた夫は、妻の本当の心を知りたくなったので、自ら近衛兵の一公爵の名刺を添えて妻の許へ花束を送ったりして、その歓心を買って見たりした。すると妻はその名刺を夫に秘したので、夫は嫉妬し、舞台で「オセロ」を演じた際、夫のオセロは妻のデスデモナを本当に絞め殺しそうになった。が、そんな経緯を知らぬ観客はこの夜ほど彼の演技の素晴らしかった事はなかったと云って大喝采を送った。嫉妬に駆られた夫は、自ら近衛兵に扮装して、妻に会いその心を確かめようと考えた。友人の劇評家は、そんな事をした所で妻君は一眼で君だという事を見破るだろうといったが、夫は、その時は自分は世間で云う程の名優ではないのだ、と自信のある所を示して、いよいよ計画にかかった。近衛兵に変装した夫は、先ず妻に面会を申込むと、これは快く迎え入れられた。そして夫である彼が舞台で「ハムレット」を演じている間に、彼女の席へ招待される事になる。夫は益々嫉妬に狂いながら、この危い二役を演ずる事になった。斯くて彼はハムレットを舞台で演ずると直ちに近衛兵の制服に着換えて妻の席に現れる。これが敷度あった後に、彼は素早く妻に接吻してしまう。これで夫は妻の真相を知ったので、落胆しながら楽屋へ帰った。翌日、彼は妻に昨夜は何事も無かったかと苦笑しながら尋ねると、妻は何事も無かったと答えた。夫は接吻の事を打開けて妻をなじると、妻は驚いて気絶してしまった。この時、劇評家が現れて妻の耳に何事か囁いた。すると妻は夫の方を見て笑い出し、実際の所は、最初から夫だと知っていたのだと云い添えた。かくて夫は、このお芝居事をこれで止めてかつてない幸福を感じた。妻の方は少くともそれを確信させ得た事に成功したのであった。妻はその感謝の意を表する為に夫には知れないように劇評家に可愛い手を差し伸した。

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