幻影の船

解説

久し振りのノルディスク映画である。主役はチャールス・ウィース氏。マリアット船長原作の有名なる物語をウァルデマー・アンダースン氏とエマニュエル・グリージャース氏が共同で脚色したものである。無声。

デンマーク
原題または英題:The Phantom Ship

ストーリー

十七世紀中頃の事、オランダの一小都テルニュースに数奇を凝らした一軒家があった。主人バンデルデケン船長の姿が不思議に見えなく成って以来表玄関の一室は十八年間鎖ざしたまま明けずの間に成って居る。倅のフィリップ・バンデルデケンは未だ十六、七の腕白盛り、彼の母親が此の秘密の室の鍵を握って総ての物語を胸に秘めて居た。其の母が死ぬ今端の際にフィリップを枕頭に呼んで十八年間の秘密を打ち明けた。その話によるとフィリップの父は九週間の間希望岬を迂廻せんと風雨に逆って航海を続けるうち、恐怖と憤怒の余り気が狂って神を涜し造物主を呪い、乗員一同船を後に帰せと勧めても聴き入れず、水先案内が彼の言に逆らったからとて海中に投げ込んだ。そしてたとえ如何なる審判の日が来るとも天も地獄もあるものかと罵った。その言葉は一々其の侭天の記録に載せられ、これ以来十八年間死ぬとも付かず、生きるとも付かずフライング・ダッチ号で世界の公海を彷徨い廻り、瞑目する事も出来ず、浮む瀬も無いのである。雨風繁き一夜幽霊の様にフィリップの母を訪れ来り此の話の意味の手紙を残し、神を蔑にして神の怒りを招いた我を助けて呉れと言い残して姿は消えてしまった--。フィリップは母の死後近所の医師の娘アミンと結婚し、明けずの間に積んであった金銀は貪欲なるアミンの父に与え、己れは父の生霊を捜して船に乗り、生死の境に出入した末遂に首尾よく父を救け、妻アミンがインドのゴアで悪僧の為に宗教裁判所に訴えられ烙刑に処せられんとするのをも救った。

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