イスラエルの月
解説
H・ライダー・ハガード氏作の小説を映画化したもので、「悪魔の満潮時」「ナポレオン」と同じくマイケル・カーティズ氏が監督したオーストリアのサッシャ映画である。主役は「サムソンとデリラ」出演のマリア・コルダ夫人で、アデルキ・ミラー氏と「面影」「西部魂」等出演のアーレット・マルシャル嬢とが共演するエジプト古代物語である。無声。
1924年製作/オーストリア
原題または英題:Moon of Israel Die Sklavenkonigin
ストーリー
昔エジプトの王メネプターは、王子セティと其の異母妹ウセルティとを、国法に従って結婚させ王位を譲ろうと考えていた。しかし、ウセルティ姫の嬌慢なのに引きかえ、セティは平民的で宮廷を去って閑居に書をひもといていた。ある日、セティは宮殿を訪れ詩人アナと共に連れ立って城下を視察した。そして、苦役に疲れた一奴隷が罪無くして役人に打殺されるのを見、裁判を開いて件の役人を死罪に処した。殺された奴隷はナタンと呼ぶユダヤの貴族で、その娘のメラピは、「イスラエルの月」と称せられる美女であった。王子セティのこの判決は、宮廷の人々に反対され国王も又これを不可としユダヤ人を厳罰せんとしたが、王子は暫時の猶予を乞い自ら奴隷の集落に赴いて実状を調べたいと申出た。王はこれを許したが、先ずウセルティ姫との結婚を迫ったので、王子は結婚式を挙げその夜集落に赴いた。王子はメラピと再会したが、満たされぬ思いを抱いて再び都に帰る日となって、彼は過つてユダヤ人の神を侮辱した。激昂したユダヤ人は王子殺害を企てたが、メラピの急報により辛くもセティは難を免れた。メラピは集落に帰られぬ身となり、王子に伴われて王宮に来た。王は王子を害せんとした罪を挙げてユダヤ人全部の殺戮を命じた。モーゼは現れて王に奴隷解放を説いたが王は肯じない。王子も王を直諫して王宮を逐われた。王子はメラピと楽しい同棲生活を営んだ。王が頓死し、セティ王子の従弟アメンメセスが即位した。天変地異の続くのに怖れた人々は、ユダヤ人の呪詛としたので新王も彼らを解放した。しかし、一部の強硬論者は王をして大軍を以てユダヤ人の跡を追いはじめた。かくてモーゼの奇跡の為にエジプトの大軍は紅海の鬼となったのである。メラピは怒り狂ったエジプト人に捕えられ、犠牲の壇に殺されんとした。不思議な夢の告げにセティが都に帰った時は既に遅く、傷つき疲れたメラピは王子の胸に死んだ。セティは全国民の歓呼裡に王位に就いた。