オセロ(1922)
解説
シェークスピアの四大悲劇の一つである『オセロ』は、かつてイタリア、アンブロジオ会社によって映画化され、大正四年十一月帝劇で封初され、当時のファンに深い感動を与えたものであったが、これはドイツ新興のウェルネル会社が、「カラマーゾフ兄弟」のアート・ディレクターをしたディミトリ・ブコウスキー氏を招いてその監督の任に当たらせた。主役のオセロには「アルゴール」「パッション(1919)」「カラマーゾフ兄弟」等出演のエミール・ヤニングス氏が扮し、ヤゴーには「カリガリ博士」「カラマーゾフ兄弟」等出演のヴェルナー・クラウス氏が扮している。その他フリードリッヒ・キューネ氏がブラバンシオに、イカ・フォン・レケフィ嬢がデスデモナに、テオドル・ロース氏がカッシオに扮する。(無声、全七篇)
1922年製作/ドイツ
原題または英題:Othello
ストーリー
イタリアのヴェニス市が未だ独立市であったその昔、ムーア人の将軍オセロは武勲赫々として凱旋し、ヴェニスの素封家ブラバンシオの美しい娘デスデモナの姿に心引かれ、遂に部下をして彼女を誘拐させた。かねてオセロの武名を慕えるデスデモナは、彼の結婚の申し出に快く応じて、神の御前に跪き堅い誓いを立てたのである。ちょうどこの時ヴェニスの領土たるサイプラスの島へドミニコの大軍が押し寄せるとの飛報が来た。オセロはヴェニス大公の命によって結婚の当夜直ちに部下の軍隊を率いて出征せねばならなかった。オセロは副官としてカッシオを任命したが、その地位を獲られるものと思っていたヤゴーは、これを恨みとし、かつはデスデモナをオセロに奪われた恨みも手伝って、彼等夫妻を不幸のどん底に投げ込もうと悪策を廻らせた。ヤゴーの心底を知らず、彼を信じていたオセロは彼に妻を伴って後よりサイプラスへ来る様に命じた。デスデモナを慕うロドリゴを密かに伴って、ヤゴーは別の船を仕立て、デスデモナ及びその侍女ルチアと共にサイプラスへ来た。初めて知る楽しい結婚生活、デスデモナとオセロとには、あわただしい軍陣の間ながら、歓楽の日が続いたが、それは余りにもはかない幸福であった。悪魔のようなヤゴーの眼は、絶えず機会を窺っていた。そしてカッシオは彼の悪計に陥って副官の地位を奪われ、遂にロドリゴはカッシオの刃に一命を落とす。オセロが母の形見として妻に与えたハンカチーフはヤゴーに奪われ、ヤゴーはそれをオセロに示して、デスデモナがカッシオに与えたものと讒訴した。愛するが故にオセロが妻に対する嫉妬は激しかった。哀れ、デスデモナは愛する夫の手にかかって殺されてしまう。オセロが総てはヤゴーの悪計と知った時は既に遅かった。彼も自らの命を絶って、冷たい妻の骸の上に斃した。滔々たる浪の音、颯々たる風の声。サイプラスの夜は深々と更けていく--。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ディミトリー・ブコエツキー
- 脚本
- ディミトリー・ブコエツキー
- スターツ・ハーゲン
- 原作
- チンティオ
- 原作戯曲
- ウィリアム・シェークスピア