劇場公開日 2022年12月30日

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「感性に訴え掛けるジャン・コクトーの生と死と愛のイマジネーションが素晴らしい映画の詩」オルフェ(1950) Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5感性に訴え掛けるジャン・コクトーの生と死と愛のイマジネーションが素晴らしい映画の詩

2023年6月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、TV地上波、VOD

フランスの天才詩人ジャン・コクトーがギリシア神話のオルフェウス伝説を現代に移し変えた原作を自ら演出した不思議な魅力に溢れた映画。イメージ優位の映像が詩的な神秘性に達すると、残るは不気味なほどの畏敬の念である。(1975年12月13日地上波テレビ)

詩人コクトー独自のイマジネーションに魅せられる、物語を単に語る範疇の映画とは一線を画す傑作。ストーリーや登場人物を現実の世界に当て嵌めて理解しようとしても納得できる答えが見つからないのに、とても面白い。オルフェの自宅の現世と廃墟のような死の世界のコントラスト。生と死の境界を鏡一枚で表現した演出のユニークさ。死の世界に足を踏み入れたオルフェの動きと撮影による幻想的な雰囲気。スローモーション、逆再生、スクリーン・プロセスなどを駆使して超常現象を詩的な表現に昇華させている。これが映画ならではの面白さであり、映画が成し得る魅力である。(1980年1月18日フィルムセンター)

演出で唸らされたのは、郵便配達員が門の鈴を鳴らすショットと6時の時計の音。オルフェが死の世界に行って戻って来るまでが現世では一瞬とする精神世界の描き方。死の世界に時間は存在しない。それはまた永遠を意味するのだろう。役者では主演のジャン・マレーもいいし、運転手ウルトビーズのフランソワ・ペリエも素晴らしいが、一番の魅力は死の女王のマリア・カザレスの毅然とした佇まいに一途な想いを秘めた愛の情念の表現力である。最後の涙の美しさが、純粋なる愛の証明になる。

「美女と野獣」のレビューで書いたように10代の頃にジャン・コクトーの詩集を一冊読んだものの全く理解できなかった。だが、たった一つの詩に惹きつけられてしまう。それは青二才の少年が自惚れと自己嫌悪の狭間で彷徨う中、漸く見つけた光明であった。

僕は太陽がまともに見れる
そなたの眼にはそれが出来ない
これなんだ僕の自慢の芸当は
たった一つの勝味は

1975年の17歳に記録したテレビ見学の年間ベストを振り返ってみます。今となっては、この頃が映画を貪欲に、また偏見なく楽しんでいたように思います。

①わが谷は緑なりき②自転車泥棒③風と共に去りぬ④死刑台のエレベーター⑤真実の瞬間⑥荒野の決闘⑦駅馬車⑧汚れなき悪戯⑨居酒屋⑩オルフェ
⑪戦争は終わった⑫奇跡の人⑬ジョニーは戦場へ行った⑭冒険者たち⑮アパートの鍵貸します⑯サムソンとデリラ⑰コレクター⑱好奇心⑲別れの朝⑳さよならコロンバス
㉑パリは燃えているか㉒地上最大のショウ㉓ビバ!マリア㉔バス停留所㉕シンシナティ・キッド㉖ローズマリーの赤ちゃん㉗OK牧場の決闘㉘真昼の暴動㉙地下室のメロディー㉚遙か群衆を離れて
次点・ジョンとメリー、栄光への脱出、さらば友よ、女と将軍、白鯨、傷だらけのアイドル、バーバレラ、悪い奴ほど手が白い、マーニー、わらの犬、バッファロー大隊、白い肌の異常な夜、トム・ソーヤの冒険

上位に選んだ中で特に好きな映画は、ルイ・マルの「死刑台のエレベーター」とフランチェスコ・ロージの「真実の瞬間」の二作品で、背伸びして選出したのがジャン・コクトーの「オルフェ」とアラン・レネの「戦争は終わった」でした。もし自分に誇れるほどの才能が有ったら、このフランス映画のような感性に訴え掛ける作品が創りたいと幻想を抱いたのもです。私が思う理想の映画の形の一つが、このコクトーの「オルフェ」でした。

Gustav
トミーさんのコメント
2023年10月16日

コメントありがとうございます。
ご親切におすすめしていただきまして。
「浮雲」は観ました、あのお話が凄い大作になってるのに驚愕しました。おすすめ作、どっかかかりますかね~

トミー
トミーさんのコメント
2023年10月16日

コメントありがとうございます。
まだまだ観たい作品が多いです、成瀬やヘルツォークやら。「無法松」1作目も何か2作目にはない情緒を感じます。

トミー
トミーさんのコメント
2023年10月16日

共感ありがとうございます。
技術は稚拙なんでしょうが、物語作りとか映像へのアイデアとか昔の人の方が豊かと感じます。現在の人も頑張ってほしい、くれぐれも尺には注意して。

トミー
talismanさんのコメント
2023年6月26日

Gustavさん、オルフェ、美女と野獣の両方に共感いただきありがとうございます。稚拙な感想しか書けない私にとってGustavさんのレビューには私が言語化できなかったこと、知らなかったこと、気づかなかったこと沢山で胸がときめきました

talisman