オルフェ(1950)のレビュー・感想・評価

オルフェ(1950)

劇場公開日 1951年4月17日
1件を表示 映画レビューを書く

フランス共産党の実態への批判

死神の王女役のマリア・カザレス!
彼女の美しさだけで観る値打ちがある
小柄であり得ない程に細く華奢、知的な面立ち
白い肌に黒い長い髪、切れ長の大きな瞳
正にこの世のものではない美しさを体現している
彼女はフランス共産党の理想を象徴している存在だ
だから限りなく美しく描かれている

物語りはギリシャ神話をそのまま現代に翻案したもの
鏡を通り抜けて向こう側の死の世界に行き来するシーンは単純な特撮ながら効果的なイメージを提供して、戦後まもなくとは思えない

地獄の査問委員会、王女、ラジオから流れる詩文による暗号文、乱数、モールス信号
これらはおそらく戦時中の地下抵抗組織の記憶によるものだろう
正確にいうならば、フランス共産党の地下組織だ
ソ連からの指令に基づき表の世界の抑圧者を排除せよだ
詩人などのフランス知識階級は派閥争いをしながらも、そこに参画しようとする
しかしその実態は、結局のところソ連の思惑で動く存在なのだと知る
フランス人とフランス国家の為ではない
共産党に従うのなら、その現実を決して見てはならないのだ
見たら愛国心は死んでしまうのだ
ソ連からの指令に依らない行動は査問委員会に掛けられてしまうのだ
戦後、フランス共産党は公然化して一大勢力を誇ることになったが、その実態は鏡の向こう側の指令で動いていたのだ
だから、王女は査問委員会に歯向かい主人公たるフランス知識人の味方たろうとする
しかしそれは露見し逮捕されていくのだ
そして主人公は王女を忘れ、彼の妻すなわちフランス国家への愛国心を取り戻して終わるのだ

つまり本作はフランス共産党の実態を示し、批判する映画なのだ

ソ連もとうに崩壊し、共産主義への理想も幻想ももはや超絶的な美貌の王女なのではなく、ボロクズを纏ったミイラになり果てている
そんな21世紀に本作を観る我々には、そんな寓意はもはや読み取る事は難しい
ただのファンタジー映画としかもはや見えないのかも知れない

当時のヨーロッパの知識人はこの寓意をキチンと読み取り、栄誉あるヴェニス映画祭監督賞与えたのだが、果たして日本ではどうなのか?

本作のテーマは今日もなお日本のメディアの人々こそ観るべきテーマなのだが、果たしてこれを読み取れ、そのメッセージを正しく受け取れるのだろうか?
暗澹たる気持ちが広がるのみだ

あき240
あき240さん / 2018年10月11日 / Androidアプリから投稿
  • 評価: 3.5
  • 印象:  -
  • 鑑賞方法:DVD/BD
  • コメントする (コメント数 0 件)
  • 共感した! (共感した人 0 件)

1件を表示

映画レビューを書く
このページの先頭へ

最近チェックした履歴

映画の検索履歴

他の映画を探す

映画館の検索履歴

他の映画館を探す

特別企画

Jobnavi