「頑固オヤジ」戦火を越えて(1965) Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5頑固オヤジ

2021年3月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「ロードムービー」という触れ込みだったが、ちょっと違うと思う。
いわゆる「ロードムービー」なのは前半だけだ。その前半でさえ、ロケーションも旅も“自分探し”も、テーマではない。
扱われているのは、戦争だ。

ジョージア(グルジア)人の映画であるが、「ソ連邦」時代である。
いろんな民族の兵士が“一丸”となって対独戦を遂行しており、「民族協和」が一つのテーマになっている。
主人公のジョージア人は「CCCP (= Union of Soviet Socialist Republics)」の国境を示す看板を掲げ、一方、慰問団は塹壕で主人公のためにジョージア音楽を奏でるのだ。
ソ連邦による“民族動員プロパガンダ”とみることもできようが、この映画の内容はそういう卑俗な思惑をはるかに超えたところにある。

(ネタバレになってしまうが、)途方に暮れていた主人公に親切してくれた若い兵士が殺されて、怒りでドイツ兵を撲殺するところから、主人公の従軍が始まる。
主人公の身を守るためでもあるのだが、それだけのために殺人を犯すのではない、という“エクスキューズ”が感じられる。
しかし、主人公の心は、戦争で“すさむ”ことはなかった。
葡萄畑を踏みにじる自国の戦車に怒りを爆発させ、「命を大切にしない振る舞いは、(ドイツの)ファシストと一緒だ」と糾弾する。

最後の戦闘場面の作り方は、ストーリーと密接に絡んで素晴らしい。
大きな建物の3階にソ連軍が閉じ込められ、2階にそれを包囲するドイツ軍、さらに1階に逆包囲するソ連軍。
(ネタバレになってしまうが、)そこで、1階と3階に別れた、主人公と息子が感動の再会を果たす。こんな見事なシチュエーションは、自分はこれまで観たことがない。
主人公の息子が「最初にこの橋を渡った」と書かれた跳ね橋が、次第に下がっていくラストシーンも素晴らしい。

直球勝負の、はらわたにグッとくるヒューマニズム作品である。
こういう隠れた傑作に出会えるから、映画館通いは止められない。
感動した。
<ソヴィエト映画特集(@シネマヴェーラ)にて鑑賞>

Imperator